【知事選・30代以下県民アンケート(上)】処理水放出や復興

 

 福島民友新聞社は、30日投開票の知事選で県内の30代以下の有権者100人を対象にした県民アンケートを行い、若年層の関心を探った。

 処理水放出 賛否「どちらとも言えぬ」48%

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡る問題を「知っている」と回答した人に是非を尋ねたところ、「どちらとも言えない」が48%と約半数を占め、県民の苦悩がうかがえる結果となった。賛否を明確にした人のうち「賛成」は35%、「反対」17%で、賛成が反対を上回った。

 処理水を巡る問題について「知っている」と答えたのは69人、「知らない」は31人で、問題の認知度は約7割に上った。69人のうち海洋放出方針に「賛成」は24人、「反対」は12人で、「どちらとも言えない」は33人だった。

 最も多い「どちらとも言えない」との回答をみると、昭和村の20代男性は「廃炉に近づくのであればいいという思いと、漁業関係者らの思いの両方の立場がある」と苦悩を吐露した。いわき市の20代男性は「放出地を福島に限定しているから差別や偏見が生まれる」との考えで、福島市の20代女性は「福島での放出は避けたいと思うが、受け入れてくれる他の自治体があるとは思えない」と現実的な見方を示した。

 「賛成」の多くは廃炉の進捗(しんちょく)への期待と安全性を踏まえてのものだった。会津若松市の20代男性は「現時点で最も影響の少ない手段」、郡山市の30代女性は「処理することのメリットを優先して受け入れたい」とした。いわき市の30代男性は「県民も望んでいないと思うが、地上にため込むには金も場所も厳重な管理も必要」と陸上保管の課題を挙げた上で「民主主義の神髄・多数決で決めては」と提案した。

 一方、「反対」の多くは「安全だとしても風評被害につながる可能性が高い」(白河市の30代女性)と風評を懸念する意見だった。「住民、漁業関係者らの了解を得た上で決定されるべきだ」(楢葉町の30代男性)「全国に向けた説明が十分ではない」(喜多方市の20代女性)など国や東電の手法を疑問視する声も上がった。「賛成」とした伊達市の20代女性も「説明が足りないから反対されるのでは」と指摘した。

 処理水の処分を巡り、政府は来春にも海洋放出を実施する方針を示している。知事選に立候補している2人のうち、現職の内堀雅雄候補(58)は「県民、国民の理解が極めて重要」として、丁寧・十分な説明による理解醸成と万全な風評対策を求めている。新人の草野芳明候補(66)は海洋放出方針に反対の姿勢を明確に示し、汚染水発生を防ぐ「広域遮水壁」の設置などで「陸上保管は可能」と主張している。

 「本県復興した」7割超

 震災、原発事故から11年半が経過した本県が復興したかどうかについても尋ねたところ、「復興した」「どちらかと言えば復興した」との回答が73人と7割以上に上った。

 「復興した」「どちらかと言えば復興した」「どちらかと言えば復興していない」「復興していない」の四つから選んでもらった。内訳は「復興した」が7人、「どちらかと言えば復興した」が66人、「どちらかと言えば復興していない」が20人、「復興していない」が7人だった。

 浜通りをみると、多くの人が「復興は道半ば」との認識を示しており、「復興した」と答えた南相馬市の30代男性は「復興できていない地域もあるとは思うが、次の次元に進むべき時期に来ている」と指摘した。

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 県民アンケート 各種選挙で投票率が低い若年層の関心を探ろうと、9月下旬~今月中旬に県内の18~39歳の有権者100人を対象に行い、男性54人、女性46人から回答を得た。地方別で浜通り27人、中通り56人、会津17人。年代別では10代19人、20代42人、30代39人。前回の知事選の投票率は18歳41.32%、19歳19.84%、20~24歳20.42%、25~29歳25.80%、30~34歳28.64%、35~39歳31.51%で、いずれも全体の投票率の45.04%を下回った。