【知事選・県政展望】シンカする挑戦 3期目内堀氏、難題山積

 
内堀氏の当選確実がテレビで報じられ、拍手する陣営関係者ら。「相乗り」の構図から、県議選などに向け各党の思惑が交錯しそうだ=30日午後8時過ぎ、福島市

 「2期8年の挑戦をシンカ(進化、深化、新化)させ、一つ一つ課題を克服していく」と選挙戦で訴え続けた内堀雅雄氏。震災から11年半でようやく緒に就いた帰還困難区域の生活再建や、半年後に迫る原発処理水の海洋放出計画、急速に進む人口減少など復興・創生の前進に向けた課題に加え、県民を苦しめる物価高や相次ぐ自然災害、コロナ禍など新たな逆風への対応も求められ、3期目に入る内堀県政には、葛藤を伴う難題が山積している。

 震災から10年の経験や教訓を踏まえ、本県の将来像を定めた県総合計画(2022~30年度)。内堀氏はこの計画に基づき、原子力災害からの復興・再生や健康長寿、産業振興などを軸とした公約を掲げた。

 原子力災害からの復興を巡っては唯一、全町避難が続いていた双葉町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除されるなど一定の前進がみられる一方、復興拠点から外れた地域の対応は具体化しておらず、住民帰還に向けた取り組みも途上だ。来春には処理水の海洋放出が予定され風評防止や理解醸成のための対策が急がれている。

 福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想は来年4月に向けて福島国際研究教育機構の設立準備が進み、立地自治体の垣根を越えて広域的に効果を波及させるための具体策が求められる。中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に保管している土壌の県外最終処分に向けた議論も今後、本格化する見通しだ。

 第2期復興・創生期間(21~25年度)は来年度、折り返しを迎える。これまでは県の要望をおおむね反映した形で復興関連の政府予算が組まれてきたが、震災から10年の節目を経て予算確保に向けた政府との折衝は年々厳しさを増す。途上にある本県復興を成し遂げるため、内堀県政は3期目も正念場が続く。

 内堀氏が復興とともに最重点課題と位置付ける地方創生の課題も根深い。県内では震災後ほぼ5年半に10万人のペースで人口が減っており、戦後初めて180万人を割り込んだ。子育て支援や雇用確保、移住・定住など多様な対策を早急に進める必要に迫られている。

 県とともに県政の両輪を担う県議会は今回も過去2回と同様に自民、県民連合、公明の各会派が内堀氏を支援。共産を除く「オール与党」で相乗りの構図となり、内堀氏も党派色を出さずに選挙戦を戦った。一方、応援演説に立った自民の国会議員が、内堀氏が2期8年で政権与党との関係を深め実績を積み上げてきたとして「県政、国政の二人三脚で進めてきた」と強調するなど、内堀氏支援の主導権を巡って緊張感が走る場面もみられた。

 県政では「オール与党」だが、自民・公明と、立憲民主などでつくる県民連合は、国政で対立する立場。来秋の県議選や今後の国政選挙を見据え、内堀氏支援を掲げた各党の思惑の行方も今後の県政の焦点の一つだ。(報道部・渡辺美幸)