【衆院・変わる選挙区(上)】現職5人、自民に難題

 
前回の区割り変更で福島3区から4区に編入された西郷村。今も上杉、菅家両氏のポスターが並び立つ

 「本県の復興・創生を進めるためには現有5議席の維持が大前提だ」。改正法成立後、自民党県連幹事長の西山尚利は強調した。現5選挙区全てに現職を抱えるだけに党として厳しい判断を迫られることになる。

 候補者調整はまず、現3区のうち白河市など県南地方と、会津若松市を中心とした現4区が統合される新3区が焦点になりそうだ。会津を長く拠点とする菅家一郎(67)=4期、比例東北=と、県南で支持を集める上杉謙太郎(47)=2期、比例東北=の2人の地盤が絡み合う。

 党本部はこれまで候補者調整を迫られた際、選挙区と比例代表の候補を選挙ごとに入れ替える「コスタリカ方式」を度々採用してきた。本県でも一時、現3区や現5区でコスタリカ方式を取り入れた経緯がある。

 県連は党本部に対し、県内各総支部の意見を聞いた上で、現職5人の議席確保を求めていく方針だ。県連内からは、比例東北の1議席を本県関係候補に優先して配分するよう求める案も浮上しており、西山は「関係各所と連携して知恵を出しながら、丁寧に進めていく」としている。

 「(上杉は)年齢も若く将来ある国会議員。引き続き互いに国政の場で復興に貢献できるよう県連と協議したい」。菅家は言葉を慎重に選びながら調整の在り方に言及した。ただ上杉の地盤の現3区のうち、県中は新2区に組み込まれるため「(上杉は)新3区と新2区のどちらがいいのか。本人の意向も踏まえ、しかるべき調整が必要だ」とし、明言は避けたものの自身の新3区からの立候補に意欲をにじませた。

 「(現)3区の支援者と一緒に仕事ができるよう望む」。上杉も地元と密接に結び付いた政治活動の継続を願う。昨年の衆院選では約7万6000票を獲得。2017年の衆院選から約1万6000票を伸ばし、着実に支持を広げている。現3区が分割されて誕生する新2区と新3区について「地域支部の考えもあり、どこから出馬したいとは言えない。ただ(昨年の衆院選で)県南で勝利したのは客観的な事実だ」と強調した。

 ある県連関係者は「(調整方法で想定される)比例単独での立候補かコスタリカ方式のどちらを採用しても、現職同士や『意中の候補』に投票できない有権者の間の溝は深まる。次期衆院選の日程が見えてくる土壇場まで決まらないかもしれない」と頭を抱えた。(文中敬称略)

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 衆院小選挙区が「1減」となる本県。現職を抱える自民、立憲民主両党による候補者調整は「誰かは根を張った選挙区を失う」(国会関係者)状況を余儀なくされる。難航が予想される調整を巡り、両県連幹部や現職の思惑を追った。