「作業員」編へ識者の意見【番外編 上】北村俊郎氏・元日本原子力発電理事

 

 県内の除染や福島第1原発の廃炉に携わる作業員について、置かれている状況や県民の思いを取り上げた連載企画「復興の道標 作業員」(1月6~13日、全7回)。連載を踏まえた識者の意見を2回にわたって紹介する。

 ◆北村 俊郎氏(富岡町から須賀川市に避難)

 多層請負の改善策を

 除染や廃炉作業は、元請けに下請け業者が連なる多層の請負構造の形をとらなければ人数を集められないのが現状。しかし多層構造の末端では作業員が定着せず、教育効果や経験が蓄積しづらかったり、良い人材が集まりにくいなど多くのデメリットがあり、改善のためにさまざまな工夫が行われなければならない。

 例えば優良作業員の表彰制度を設けて定着を促したり、元請けが下請けの作業員を直接教育したり、「再下請け」を制限することなどが考えられる。フランスの原子力産業では、発注者が業者の作業状況を見回って成績をつけ、評価の良くない業者を入札禁止にするなどの工夫を講じている。

 連載は作業員の雇用問題について、作業員自身だけではなく地域にも影響を与えているとの視点で捉えているのが特徴で、地元紙らしい。だが、多層構造は過去の大事業や原発の定期検査などで繰り返し導入されているのに、これまでどう改善が図られてきたかという点には触れておらず、取り上げるべきだったと思う。

 作業員と地域住民の共生には、地元の作業員を増やすことや、発注者や元請け企業と住民との意見交換の場を設けることが必要だ。

 (2016年1月14日付掲載)