「作業員」編へ識者の意見【番外編 上】坪倉正治氏・東大医科学研究所

 

 ◆坪倉 正治氏(南相馬市立総合病院など勤務)

 健康保持へ配慮必要

 復興のため、遠方からやってきている作業員には1人暮らしの人も多く、健康を崩しやすい環境にあると言える。生活習慣病を抱えている人が少なくないことなど、まずは現状を広く知ってもらうことが重要だ。

 医師が宿舎などに出向いて健康に関する講話を行い、作業員が互いに健康状態に気を配ることなどを呼び掛けることには意味があるだろう。作業員本人にも気を付けてほしいし、行政を含めて周囲みんなで作業員の健康を守っていこうという機運が高まればいいと考えている。

 一方、除染事業者が作業員を雇用する際、健康状態をより厳格にチェックしようとすれば、(健康でない)作業員の就業の機会を奪うことにつながる。また、事業者が必要な人員を集めることができなくなる可能性もある。そうすれば県民も困るだろう。健康上の観点だけでは捉えることができない、難しい問題をはらんでいる。

 事業者や行政、どこが取り組むべきなのかという問題もある。いずれにせよ健康を守ろうと強調するあまり、作業員にしわ寄せがいったり、作業員が糾弾されるような状況は避けなければならない。

 (2016年1月14日付掲載)