「作業員」編へ識者の意見【番外編 下】丹波史紀氏・福島大行政政策学類准教授

 

 ◆丹波 史紀氏(社会福祉などを研究)

 労働力確保に危うさ

 除染や廃炉作業のために長期にわたって何千人もの作業員が必要というのは紛れもない実態だ。ただ下請けの多重構造や、法令を守っているかが疑われる会社に作業員確保を頼っている現状を見ると、しっかりとした労働力が長期にわたり確保できるのか、体制的な危うさを感じている。

 身元がはっきりしない日雇い労働者は、県外の山谷(東京)や釜ケ崎(大阪)などにもともといて、そうした人が福島に流れ込んでいるだけ。これは国全体の問題で、福島県だけを変えたとしても、日雇い労働者が流入する構造は変わらない。

 労働環境改善に向けては国がルールをしっかり定めることが重要だ。ただ、どうしても賃金未払いなどの会社は出てくる。その場合に労働者がすぐに相談できる窓口の役割が大きい。告発があれば、労働基準監督署なども積極的に関与できる。

 廃炉作業は被ばく線量の上限があり、技術も必要とされるため、人材確保が除染作業よりもさらに困難になる。東京五輪に向けて人材が東京に集中すれば「誰でもいいから来てほしい」ということになりかねない。人材確保に向けた対策を考えていく必要がある。

 (2016年1月15日付掲載)