「ゆがみの構図」編へ識者の意見【番外編 上】和合亮一氏・詩人

和合亮一氏
◆和合 亮一氏(福島を発信し続ける)
求められる言葉の力
穏やかな空気、水、果物などが自慢で、自然にあふれた「福島」。優しい響きだった福島が、震災と原発事故後は「フクシマ」と、カタカナ特有の「鋭い響き」を持つ言葉で表現されるようになった。直後にオランダを訪れたが、現地の人は飯舘村など本県の地名に詳しかった。われわれが抱いている福島の印象とは異なる「フクシマ」として、世界の人々がイメージしていることをその時、実感した。
原発事故直後、私は事故に伴う怒りや悲しみを表現したが、今はそれとともに福島の「回復」を表現したいと考えるようになった。回復というこの言葉にたどり着くまでに5年かかった気がする。
今回の連載で描かれているように、県民は今もさまざまな不条理の中にいる。同時に、この5年で変化したことも多い。言葉の力が求められるのはこれからだ。
必要なのは「対話」。相手と考えが違うことを認めながら、話し合い、新しいつながりをつくり出す中で、本県からの文化の発信を模索したい。こうした取り組みを続けることが、カタカナの「フクシマ」のイメージを「福島」に変えていくことにつながる。
(2016年2月14日付掲載)
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