「ゆがみの構図」編へ識者の意見【番外編 上】鈴木典夫氏・福島大行政政策学類教授
◆鈴木 典夫氏(被災者支援に従事)
客観的データ尊重を
連載の1回目は昨年、国道6号の清掃活動を企画したNPOに「殺人行為だ」などと中止を求める電話やメール、ファクスが殺到した出来事を取り上げた。このNPOは、県民の声に耳を傾けながら地道な活動を続けてきた組織。復興に向けた純粋な取り組みが中傷を受けることなど、過去に発生した他の災害ではあり得なかったのではないか。
震災と原発事故からの復興とは、被災した県民が日常を取り戻すための活動のこと。何らかの主義主張のための活動ではない。県外の人が自身の主義主張のために本県にメッセージを送るのは控えてほしい。
放射線のリスクに対する判断は人それぞれだ。しかし原発事故後、蓄積されてきた客観的データを尊重する態度は、放射線への認識がどうであれ必要だ。
丸5年の節目を前に、県外メディアには実態に合わない紋切り型の表現をやめるべきだと言いたい。「外遊びが制限されている中、福島の子どもたちは...」などと原発事故直後に使用された定型句がいまだに使われるケースや「うつ状態の人がいる福島」など一部を全体と捉えるケースがあるのではないか。現状を理解した上で表現してほしい。
(2016年2月14日付掲載)
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