「賠償の不条理」編へ識者の意見【番外編】福迫昌之氏・東日本国際大副学長

福迫昌之氏
◆福迫 昌之氏(地域社会学)
制度自体に矛盾、欠陥
賠償金制度は、原発事故の被害者を「避難者」という特殊な状態のまま「塩漬け」にしてしまった側面がある。避難者自身や、受け入れる社会にも負の影響をもたらしており、未曽有の危機に対応する制度として矛盾、不備、欠陥があると言わざるを得ない。
原発事故の被害は大きく、賠償は当然必要だ。事故前に完全に戻ることは不可能で、精神的賠償をいくら受け取っても納得を得られないのは当然だ。
しかし、どこかで区切りをつけて前に進まなければならないのは明らかで、避難者が「生活」を取り戻すための施策が必要だ。賠償金制度を維持しながら「避難者の自立は自己責任」として放置し続けるなら、政府は怠慢のそしりを免れない。生活再建のための支援に移行するべきだ。
連載第1回では、避難者と受け入れ先の市民の間で生じているあつれきが描かれた。相互に相手の状況を理解する努力は必要だが、心の中のわだかまりを「個人の問題」に矮小(わいしょう)化するのではなく、賠償金制度自体に欠陥があるという観点で解決策を探るべきだ。
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