【復興の道標・不信の連鎖-2】根深い韓国での風評 草の根交流に影

 
運休が続く福島空港国際線の時刻表。風評が路線再開に影を落とす

 「イベントが中止になりそうだ」。2月19日の夜、震災、原発事故からの復興と東北の魅力をPRするイベントに出展するため韓国・ソウルを訪れていた県の担当者に、主催する外務省の外郭団体の関係者から電話が入った。直前のレセプションが問題なく終了したばかりだった。理由も分からず、担当者は困惑するしかなかった。

 翌日、ソウル市のホテルに集まった関係者に、外務省の担当者が正式に中止を伝えた。しかし「ソウル市城東区の許可が下りなかった」と告げられただけで、具体的な理由は分からないまま。レセプションに参加した県空港交流課長の石川靖(51)は後日、中止となった背景に「食品の安全性に問題がある」とした韓国の市民団体の抗議の動きがあることを知った。

 「福島第1原発の汚染水問題が解決しないうちは、安全性は信用できない」。韓国の市民団体の矛先は日本政府に向けられる。韓国政府は現在も、本県をはじめ青森、岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉8県すべての輸入を禁止している。イベントでは本県産の菓子や日本酒などを紹介する予定だったが、中止は本県に対する海外での風評の根深さを物語る。

 知事の内堀雅雄(52)は、2014(平成26)年の就任以降、海外での正しい情報発信を続けるが、風評払拭(ふっしょく)にはほど遠い。震災後から運休が続く福島空港ソウル線も、風評の影響で再開の見通しが立っていない。

 石川は2月19日のレセプションで、ソウル線を運航していたアシアナ航空の路線担当役員や実務担当者と率直な意見を交わした。熱意を持って年間3万人以上の利用があった福島―ソウル線の路線再開を訴えたが、アシアナ側は「韓国国内の情勢を見極めたい」と慎重な姿勢を崩さなかった。石川は「韓国国民の不安感が払拭されなければ、再開は難しい」と実感した。

 風評は、民間の交流にも影響を及ぼす。福島市のNPO法人が昨年の夏に企画した、韓国の青少年約170人を本県に招いた日韓国交正常化50周年記念の交流事業は、韓国の環境団体などからの激しい非難にさらされた。

 「死の街に子どもを追いやるのか」。NPO法人の理事長を務める鄭玄実(チョンヒョンシル)(55)の元には連日、韓国からの「電話攻撃」が届いた。鄭は「何を言っても聞き入れられなかった」と、母国での風評の根深さを思い知った。

 ただ、本県を訪れた青少年たちが先入観を拭い去って「生の現状」を学んでいる姿に、鄭は一筋の光明を見た。「民間では、批判があっても強い思いがあれば実行できる。福島の正しい姿はまだまだ現地に伝わっていないが、伝える努力を続けていきたい」(文中敬称略)