「不信の連鎖」編へ識者の意見【番外編 上】前田正治氏・福島医大災害こころの医学講座教授
◆前田 正治氏(精神科医)
職員ケア、国の責任で
原発事故で避難を余儀なくされた住民の怒り、不信感は東京電力や政府というより一番身近で支援に当たった役場の職員に向かった。支援のため職員に面接調査を行ったのだが、うつ病の多発など、状況はすさまじいものだった。
支援者向けの支援は災害時には必須だが、第一線で活動する消防隊員や自衛隊員向けの心のケアの必要性は重視される一方、自治体職員については「役場が住民にサービスするのは当然」などと、注目されてこなかった。長い復興期間、過酷な状況が続くにもかかわらずだ。職員自身が社会に声を上げることもできない。
当然役場を辞める人も多く、そのため、連載記事で描かれたように外から来た職員が増えた。外部の力は必要なのでそれ自体悪いことではないが、住民との意思疎通を難しくする要因ともなっている。
職員が倒れてしまっては復興どころではない。例えば双葉郡8町村の職員の心のケアに当たるセンターを国の責任でつくるなどの対策が求められる。最も必要なのは、職員へ感謝と敬意の気持ちを表すことだ。住民からの「お疲れさま」という一言が、職員にとって何より助けになるだろう。
(2016年4月14日付掲載)
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