飯舘の行政区「農泊」事業 村民の暮らし次世代へ、ログハウス計画

東京電力福島第1原発事故の避難指示が一昨年春に解除された飯舘村の佐須行政区で今春にも、村に泊まりながら農業の体験などができる「農泊」事業が始まる。村民の帰還の足取りが鈍い中、交流人口の拡大につなげて地域活性化を図り、「までい」な暮らしを次世代につないでいく。
「若いうちは駄目でも、第二の人生として村に戻って暮らしたい人はいると思う。次の世代にきちんと地域を引き継げるようにしたい」。菅野宗夫区長(67)は古里の文化の伝承に力を込める。
佐須行政区は、独自で協議会を設立、住民主体で活動を進める。農林水産省の補助金を活用し、仮設住宅の払い下げを受けて本年度末までに旧佐須小近くに宿泊施設としてログハウスを整備する計画だ。ログハウスは木造2階建てで、最大約30人の受け入れを見込んでいる。
体験事業のソフト面は協議会を中心に今後詰めるが、ログハウスを交流拠点に農作業の体験をはじめ、収穫した食材を使って食事を提供するレストランの整備などを検討。村内ツアーなども視野に入れ、村で古くから受け継がれてきた農村での暮らしを体験してもらうつもりだ。
「いつかは農家民宿もできたらな」。菅野区長は地元住民が一体となって地域を盛り上げていく姿を思い浮かべる。農泊事業を息の長いものにするためにも「安定した収入を生み出せるようにしなきゃいけない」と表情を引き締めた。
同行政区は村内の北部に位置し、相馬福島道路とも近い。広島県から移住し、同協議会の事務局長を務める田尾陽一さん(77)は山に囲まれた自然豊かな景色に目をやりながら「便利さを求める中で日本人が失った思いを見直す場所になるのではないか」と話した。
村は本年度から新たな村づくりの一環として移住、定住、交流事業に力を入れており、同行政区の農泊事業に注目する。村の担当者は「(事業は)間違いなく追い風になる。一つの行政区の活動から交流や絆が生まれ、村全体に波及すればほかの行政区の意欲につながる」と期待を込めた。
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