双葉町で「復興産業拠点」現地視察ツアー 立地企業には独自の支援・優遇策

 
中野地区の視察台で工区の位置を確認する参加者

 東京電力福島第一原子力発電所の事故にともない、全町避難が続く双葉町は3月1日、同町中野地区に整備を進める「中野地区復興産業拠点」の現地視察ツアーを実施した。

 ツアーは町内への企業立地や建設予定の産業交流センターへの入居に関心のある企業の経営者や担当者を対象に、産業拠点の状況を周知し立地検討を進めてもらおうと開催した。建設業や製造業などに従事する県内外の14事業者が参加した。

 参加者一行は、中野地区から約50キロメートル南にあるいわき駅前に集合し、国道6号線と常磐自動車道で目的地に向けて北上。福島県の太平洋側の地域「浜通り」にある広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町の6町を視察した。

 双葉町は2011年の福島第一原子力発電所の事故から8年が経つ現在でも、町の96%がいまだに帰還困難区域に指定されている。同町は2020年春に避難指示解除準備区域と、JR双葉駅周辺等の一部区域の避難指示解除、そして2022年春に、特定復興再生拠点区域全域の避難指示解除を目標とする「双葉・特定復興再生拠点区域復興再生計画」(特定拠点計画)を立て、住民の帰還環境の整備を進めている。居住再開は特定復興再生拠点区域全域の避難指示解除の2022年春ごろを目指し、避難指示解除から5年後の居住人口は約2000人を目標にしている。

 同町は、その計画をもとにJR双葉駅を中心に6つのゾーンに分け、「新産業創出ゾーン」にある中野地区復興産業拠点に県内外の事業者を誘致している。産業拠点は、中野地区の約50ヘクタールで、除染が完了した避難指示解除準備区域に位置する。町内の避難指示解除準備区域は約200ヘクタールで、これは町域の約4%にあたる。主要幹線道路の国道6号線までは約1.5㎞。2020年3月に開通予定の常磐自動車道・双葉ICまでは約6㎞に位置する。現在、双葉町への南側の最寄りのICは常磐富岡ICとなっている。

 中野地区は福島第一原発から約4㎞のところに位置している。双葉町は、空間線量について「避難指示解除準備区域や特定復興再生拠点区域は、避難指示解除済みの他町村と同程度」としており、さらに「町内の空間線量は、自然減衰などで大幅に下がっている」「今後、町内の除染・解体が本格的に進めば更なる線量の低下が見込まれる」としている。

 一行は双葉町にある「双葉町ふれあい広場」につくられた復興予想図を記したジオラマを前に町職員から説明を聞いた。町職員は津波対策で海岸の堤防や防災林を整備することや交通アクセスの見通しなどを説明した。

 福島県の海岸・河川堤防の復旧計画では、震災前よりも海岸の堤防を1メートルかさ上げした7.2メートルで整備することになっており、津波リスクは大幅に低減しているという。また担当者によると、地区の南側に隣接する中間貯蔵施設には、分別施設の白いテントが見えるが、町と環境省の間で、将来的にはより南側に移す話し合いも進んでいる。加えて、帰還困難区域を南北に貫く国道6号線から左右に入る道にはゲートが設けられ、現在立ち入りが制限されているが、中野地区の避難指示が解除される2020年3月には、ゲートを通ることなく同地区に立ち入れるよう国と調整しているとした。

 その後、一行は中野地区に移動し視察台から工区の整備状況を確認。「被災伝承・復興祈念ゾーン」のある太平洋に面した東側から造成は進んでいる。今後、企業誘致を図るのは西側のエリアとなり、1区画はおよそ3ヘクタールに分けられている。担当者は立地を希望する企業について「業種に制限はないが、雇用を生み出すことが必要」と述べた。当日、視察台で計測した線量は0.057マイクロシーベルト。東京都心などとさほど変わらない数値を示した。

 一行は浪江町に移動。浪江町役場前にできた喫茶店、商工会、飲食店、クリーニング店などの商店が集まる仮設商業施設「まち・なみ・まるしぇ」で昼食をとった。続いて双葉町に戻り、JR双葉駅東側の「まちなか再生ゾーン」を歩いて視察した。震災から8年がたつが、地震によって崩れた住宅などがそのままの形で残されているところもあり、ところどころに「家屋解体中」ののぼりも見られた。双葉駅西側は住民の生活拠点「新市街地ゾーン」に区分けされ、町民住宅の建設が予定されている。2022年の居住開始を目標に町が整備を進めている。駅の東側の既成市街地を結ぶ「東西自由道路」の建設や、双葉駅の橋上駅舎化も予定されている。

 双葉町の周辺自治体で、生活に必要なインフラの整備も進められている。現在、中野地区から最も近い商業施設は、双葉町の南に位置する富岡町の「さくらモールとみおか」となる。富岡町が整備した商業施設で、2017年に開業した。地元スーパーやホームセンター、飲食店が入居している。中野地区にも2020年に「双葉町産業交流センター」がオープンする予定で、事業者の事務所や会議室のほか同センターを訪れた人たちのためのカフェ・レストラン、コンビニエンスストアなどの入居も見込んでいる。

 富岡町役場の前にはふたば医療センター附属病院が開設されている。中野地区で救急の事態があったときは、最も近い2次救急医療施設になる。重度の事態が起きた場合には福島県中通り地区にある中核都市、郡山市の病院に医療ヘリで搬送できる体制も整えている。

 ツアーに参加した住宅メーカーの物流倉庫担当者は「工場が増えれば物流倉庫の需要はある。すぐには決められないが長い目で見てほかの市町村などもみてみたい」と話した。浜通りの地元企業の担当者からは「双葉には頻繁に行っているが、整備は着々と進んできたと感じる。地元の人たちをふくめて、他の企業も来たくなる環境が整えば」という前向きなコメントもあった。その他の参加者は、立地を考える上で重要視するポイントとして公共インフラの整備、雇用、町の復興状況などをあげた。

 3月8日現在、双葉町と企業立地で協定を結んでいる事業者は3社。双葉住コン(双葉町)と大林道路(東京都)が道路舗装材製造で共同企業体(JV)を設立。アスファルトコンクリートを製造する工場を整備し、2020年の稼働を目指している。10人程度の雇用も予定している。県外からは光ディスクの製造販売などを手掛けるアルメディオ(東京都)が2018年8月に同町との立地協定を結んでいる。また、3月6日にアイワビルド(相馬市)と立地協定を結んでおり、このほかにも20社近くが進出に意欲を示している。

 双葉町は、立地企業を対象に「中野地区復興産業拠点使用料の免除」「操業奨励金」「雇用促進奨励金」など、国や県とは別に、独自の支援・優遇策を設けている。

詳しくは双葉町復興ポータルサイトへ