福島県漁連会長・野崎哲氏に聞く 漁業者の心情...「陸上保管を」

 
のざき・てつ いわき市出身。青山学院大経営学部卒。家業の酢屋商店を継ぎ、1998(平成10)年から社長。2010年7月から県漁連会長を務める。65歳。

 処理水が海洋放出された場合、懸念されるのが漁業への影響だ。野崎哲県漁連会長に聞いた。

 ―放射性トリチウムを含む処理水の海洋放出について議論が進むが。
 「安全性について分からず、海に流されるとどうなるのか、不安が大きい。発災時の海洋汚染が繰り返されることにもなりかねない。漁獲量が少しずつ回復してきた中で、また一からのやり直しにもなり得る。漁業者や消費者の心情から、海洋放出ではなく、陸上保管をして、対応について全国民で議論してほしい」

 ―漁業のいまは。
 「試験操業が始まり7年ほどが経過したが、震災前年の漁獲量の16%ほどにしか回復していない。国の出荷制限となる海産物は2品目となったが、本格操業に向けては漁獲量の回復が必要だ」

 ―魚介類の風評被害についてどのように変わったか。
 「イオンの『福島鮮魚便』の効果もあり、徐々に海産物の安全性、おいしさが伝わっている。地道にPRしていきたい。また、海外ではタイでヒラメなどを提供するフェアが中止になったり、韓国が水産物の輸入禁止措置を取ったりしている。政府などと協力して、風評払拭(ふっしょく)に努めたい」

 ―県漁連として今後、行っていくことは。
 「試験操業での漁獲の充実と県内漁協の合併問題の解決に力を入れていく。また、県水産海洋研究センターとの協力も視野に、漁業の発展につなげていきたい」