【南相馬】古里に戻らぬ選択...葛藤の日々 帰還促す特効薬はない

 

 古里に戻らない選択をした人もいる。「孫に『学校を転校したくない』と言われたことが避難先にとどまる最大の理由だ。避難先での学校や仕事の関係で戻りたくても戻れない避難者はたくさんいる」。南相馬市小高区から宮城県名取市に避難する松本充弘さん(72)はそう語る。

 それでも葛藤の日々は続く。「宮城に5年もいれば周りに友達もできるけど、どこか落ち着かない」。好き好んで避難したわけではない。小高区の自宅は、妻と結婚して節約してようやく建てた宝物だ。松本さんは「古里というのはやっぱり、いつ行っても落ち着く。家族の仕事や学校がもう少し落ち着いたら、戻ってもいいかな」と話す。

 南相馬市によると、2016(平成28)年7月に避難指示が大部分で解除された小高区の帰還者は1月31日現在で3650人と、震災当時の3割程度にとどまる。市は「帰還を促す特効薬はないが、教育や医療などを着実に充実させていくしかない」としている。