【双葉】新たな形へ『古里再生』 初の避難指示解除...魅力創出を

 
居住エリアを整備するため、土地の造成が進む双葉駅の西側。常磐線の利用客の目を引くようなまちづくりが求められる=双葉町

 帰還困難区域の一部が双葉、大熊、富岡で今月、相次いで先行解除される。全町避難が続き、初めての避難指示解除となる双葉町はもちろん、大熊、富岡両町にとっても新たな一歩となる一方、課題は山積している。既に避難指示が解除された市町村では徐々に住民の帰還が進むが、震災から9年を迎える住民の思いは複雑だ。

 原発事故から丸9年を前に、一部の避難指示が初めて先行解除される双葉町。しかし、まだ生活インフラが整っておらず町民は帰還できない。特定復興再生拠点区域(復興拠点)全域の避難指示解除と町民帰還の目標となっている2022年春に向け、インフラの整備はもちろん、町民や移住者らを呼び込むまちづくりが求められそうだ。

 「避難先の生活は、かつての双葉町での生活よりも便利。古里に帰りたいという思いだけで、戻る町民は少ないのではないか」。避難先のいわき市で双葉の伝統行事の継続に取り組む「夢ふたば人」会長の中谷祥久さん(39)は、町への帰還を望む一人として新たな魅力の創出が不可欠だと考える。

 町は一新されるJR双葉駅を中心とするコンパクトなまちづくりを推進。駅西側に居住エリアを整備するとともに、商店街があった駅東側の市街地の再生を図る。しかし、復興庁などが行っている住民意向調査で「(将来の希望も含め)戻りたいと考えている」とする町民の割合は、毎年1割ほどにとどまる。

 中谷さんは避難指示の解除が最も遅れた町だからこそ「他の自治体と同じようなまちづくりでは、町民は戻ってこないのではないか。もっと変わったアクションが必要」と指摘。20代の若者や帰還を待ち望むお年寄りらの意見を幅広く聞き、まちづくりに反映させる必要性を訴える。

 先行解除で復興まちづくりのスタートラインに立つ双葉町。伊沢史朗町長は「誤解を恐れずに言えば他のまちとの差別化を図り、双葉に戻りたい、住みたいと思ってもらえるまちにしたい」と決意を新たにする。