海洋放出、理解醸成は途上 21年夏に全体計画案発表

 

 政府は、東京電力福島第1原発事故から約2年9カ月後の2013(平成25)年12月、処理水の扱いを巡る有識者の作業部会の会合を初めて開いた。16年6月までの約2年半で処分技術の選択肢の整理を進め、海洋放出や大気放出、地下埋設など五つの選択肢を比較し、海洋放出が最も短期間に低コストで処分できるなどと試算した報告書を公表した。

 同年11月には政府が処分に伴う社会的影響に関し議論する政府のALPS小委員会を設置。風評被害対策などの検討を開始した。20年1月31日、前例のある海洋と大気への放出を「現実的な選択肢」とした上で、放射性物質監視などの面から「海洋放出の方が確実に実施できる」とした提言案を大筋で了承した。

 そして21年4月13日、政府は処理水の海洋放出方針を正式に決定した。その後政府は、放出に反対する漁業者らを対象に、放出方針決定への理解を得るための説明会を5月31日から始め、県内外で開催してきた。

 理解醸成の途上にある中、政府は8月24日、風評の抑制や安全確保に向けた当面の「風評被害対策」をまとめ、公表した。翌25日、東電は海底トンネルを新設し、原発から1キロ沖合で放出することを盛り込んだ全体計画案を発表。12月21日には放出に関する設備を整備するための計画の審査を原子力規制委員会に申請、同日までに県と大熊、双葉両町に「事前了解願い」を提出した。