「輸入緩和」動き拡大 福島県産食品新販路、UAEにあんぽ柿

 
本県産の食材を使った会席弁当に舌鼓を打つ招待客。県やJAは輸出拡大の取り組みを続けている=2月、ニューヨーク(共同)

 東京電力福島第1原発事故後に55カ国・地域が始めた本県産食品などの輸入規制。昨年はシンガポールと米国が規制を撤廃し、欧州連合(EU)も緩和した。今年2月には震災前に県産農産物の大口輸出先だった台湾も緩和し、英国も早ければ今春の規制撤廃に向けた手続きに入るなどの動きがある。風評払拭(ふっしょく)や県産品の輸出拡大が着実に進む一方、震災から間もなく丸11年となる現在も14カ国・地域は規制を続けている。

 14カ国・地域のうち中国、香港、マカオが広い品目で、韓国と台湾が一部食品の輸入停止を続ける。ほかの国・地域は検査証明書の添付などを条件に輸入を認めている。

 輸入規制が始まったことで、2010(平成22)年度に152トンだった本県産農産物の輸出量は震災後の12年度には2.4トンまで減った。しかし、その後は東南アジアを中心にモモや野菜、コメの輸出が順調に伸び、17年度以降は震災前の水準を上回っている。21年度は332トン(昨年12月末現在)と過去最多を更新。アラブ首長国連邦(UAE)へのあんぽ柿の輸出が本格的に始まるなど、新たな販路も生まれている。

 米や台湾で売り込み強化 県やJA

 県やJAは原発事故後、徹底した放射性物質検査に加え、東南アジアでの果物やコメの販路開拓など輸入規制撤廃や県産農産物の輸出拡大の取り組みを続けている。県は新年度、東南アジアに加え、昨年9月に輸入規制が撤廃された米国や、今年2月に規制が緩和された台湾への輸出拡大を強化していく戦略だ。

 東京五輪・パラリンピックでの県産食材活用による安全性やおいしさの発信を一つの目標に、2017(平成29)年からは農産物や農作業の安全性を管理するGAP(ギャップ、農業生産工程管理)の認証取得も一体的に進めている。東京五輪ではソフトボール米国代表の監督らが県産モモを「デリシャス」と発信したことが反響を呼んだ。

 内堀雅雄知事も各国・地域でトップセールスを展開。19年に中国での「夏季ダボス会議」に出席した際は、アラブ首長国連邦(UAE)の要人と会談し、その翌年にUAEで輸入規制が撤廃されるなど、成果につながっている。

 県は輸出拡大の取り組みと併せ、国などと連携して、現在も何らかの規制が残る14カ国・地域に対し、規制撤廃を引き続き働き掛けていく方針だ。