先端技術開く未来 福島ロボテス、訓練場点在する「小さな町」

 
機体を手に技術開発が切りひらく将来について語るテラ・ラボ社長の松浦さん

 「この軽い機体が災害時すぐに飛び立ち、救助につなげることができるんです」。南相馬市の工業団地に入居するテラ・ラボの社長松浦孝英さん(47)は、イルカをイメージした無人航空機「テラ・ドルフィン」を手に、技術開発が切りひらく将来について真剣に語る。

 「持ってみますか」と言われ、機体のカバー部分を手に取った。航空機の部品というイメージを覆すような軽さに、驚いてしまった。翼長4メートルの機体は、わずか20キロしかないという。ドローンや無人航空機が飛び交い、移動には「空飛ぶクルマ」を使う。テラ・ラボはそんな未来社会を担う最先端企業の一つとして注目されている。

 松浦さんが本県に腰を据えた背景には、福島ロボットテストフィールド(南相馬市、浪江町)の存在がある。福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の一環として整備され、約50ヘクタールの広大な敷地内でドローンやロボットの性能試験ができる。滑走路や災害現場を模した実物大の訓練場が点在する施設は、さながら小さな町のようだ。

 イノベ構想を巡っては、テラ・ラボのような企業が集まった成果がある一方で、「地元への波及効果が感じられない」「あまりよく知らない」などの意見も上がっている。テストフィールドで事業部長を務める本宮幸治さん(46)は「地域の方から『以前とあまり変わらない』と言われます」と認めた上で、進出企業と地元企業が協力し合う事例を増やす必要があると語る。

 フィールドには企業も入居しており、その一つのリビングロボット社を見学した。机の上で、高さ10センチほどのロボットが音楽に合わせてダンスをしていた。社長の川内康裕さん(54)は「パソコンでの簡単なプログラミングで思い通りに動かせます」と、プログラミング教材ロボット「あるくメカトロウィーゴ」を紹介してくれた。

 最先端の技術は、学校教育に役立てられるまで生活に身近になってきている。アイデア次第で、イノベ構想の成果は地域経済の再生や活性化により深く結び付き、住民の理解も得られていくのではないだろうか。

 エントランスに見学した子どもたちの手紙が掲示してあった。「ロボットとまた触れ合いたい」「プログラミングを教えてくれてありがとう」。子どもたちの感想に、その可能性を感じた。(白河支社・伊藤大樹)