双葉、大熊、葛尾3町村、年内避難解除へ 再除染など最終局面

 

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域に整備されている特定復興再生拠点区域(復興拠点)のうち、今年は双葉、大熊、葛尾の3町村で避難指示が解除される予定だ。残る浪江、富岡、飯舘の3町村についも来春の解除に向けた整備が進んでいる。

 住民が自宅に寝泊まりしながら生活再建の準備を進める準備宿泊は、葛尾村で昨年11月、大熊町で同12月、双葉町では今年1月に始まり、富岡町は今年4月、浪江町と飯舘村は今秋ごろを予定している。準備宿泊の開始は原発事故の影響が大きく住民が11年近く住んでいなかった場所を再生する大きな一歩となる。帰還する住民が快適な生活を送れるよう、再除染やインフラ整備などが最終局面を迎えている。

 ただ課題は山積する。環境省による帰還困難区域の除染がその一つだ。大熊町は、放射線量が国の解除基準(毎時3.8マイクロシーベルト)をほとんどの区域で下回ったことから準備宿泊を開始したが、降雨による放射性物質の滞留により生活道路の一部などで基準を上回る地点が確認され、同省が再除染を急いでいる。

 また、準備宿泊の参加者数は、すでに始まっている3町村のいずれも震災前の居住人口の1割に満たない。年齢を見ても60代以上が多く、時間の経過という厳しい現実に直面している。

 避難指示の解除決定に向けた政府と自治体による協議や住民との懇談会が今春、各町村で始まる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で復興の遅れが懸念される中でも、住民の帰還への思いに答える安全で安心な環境整備が重要となっている。

 復興拠点外、政府方針に期待と不安

 政府は昨年、復興拠点から外れた地域について、希望する全員が2020年代に帰還できるよう必要な箇所を除染した上で、避難指示を解除する方針を決めた。

 この政府方針に対し、帰還困難区域を抱える双葉郡5町村でつくる協議会は「一歩前進」と捉えた一方、除染範囲や、帰還意向がない場合の土地・家屋の取り扱いが定まっていないことなどを課題に上げ、復興・再生に向け「最後まで責任を持つこと」を改めて強調した。

 協議会が今年1月に行った要望では、丁寧かつ迅速に住民の意向をくみ取り、復興拠点の避難指示解除から期間を置かずに除染を実施することや、荒廃が進む土地と家屋に対する方針の早期明示、生活支援策の継続などを求めた。

 協議会長を務める吉田数博浪江町長は「住民は政府方針に対して期待と不安を抱いている。地域に寄り添った早期の対応をお願いしたい」と述べ、古里復興の過程で取り残されている住民の痛みを訴えた。