支援センター、移住先の「仕事」発信 12市町村と連携して促進

 
業務に取り組む「ふくしま12市町村移住支援センター」の職員

 県が昨年7月、富岡町に開設した「ふくしま12市町村移住支援センター」は、12市町村と連携して移住促進に取り組んでいる。特に、本県復興に関心を持つ20~30代をターゲットに、12市町村でどんな仕事をし、復興に関わることができるのかを軸にした情報発信に力を入れている。

 センターは福島イノベーション・コースト構想推進機構が運営。移住者向けの情報を集約したウェブサイトを中心に、12市町村の復興状況や住環境に加え、イノベ構想を象徴する先端技術やまちづくり企業の紹介など「仕事」の情報をまとめて発信している。

 センターの調査では、本県復興に強い関心を持つ人の4割近くが本県への移住意向があり、若い世代ほど「仕事」を重視する傾向がみられた。若年層に対し「仕事」を軸にした情報を発信する新戦略の背景にはこうした裏付けがある。復興の担い手を全国から募り、復興を加速していく狙いもある。

 刻々と変わる12市町村の最新情報を伝えるため取材チームを結成し、ツイッターやインスタグラムなど会員制交流サイト(SNS)も駆使して発信している。

 避難指示が出された地域では今春から、帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除が計画されている。拠点から外れた区域でも2020年代をかけて帰還を希望する全ての住民が帰還できるよう、避難指示を解除する方針が示されるなど、避難指示解除に向けた動きが加速する。一方、避難指示が既に解除されたが、住民の帰還が進まない地域もあり、移住促進は住民帰還と併せて重要な取り組みとなっている。

 国・県も好条件の制度

 国や県は本年度、原発事故で避難指示などが出た12市町村に新たな活力を呼び込もうと、県外から移住して5年以上継続して住む人に最大200万円、新たに起業する人に最大400万円の支援金を支給する制度を設けた。支援金としては全国にあまり例のない好条件の制度で、12市町村への住民帰還と移住促進を両輪で進めている。

 昨年7月には富岡町に「ふくしま12市町村移住支援センター」を開設。新年度はさらに、移住者の住宅確保に対する支援を拡充し、既に移住している人をサポーターとして登録するなど対策を強化する方針だ。

 県は震災前から、全国の自治体に先駆けて移住促進に力を入れてきた。2006年度に東京都内の移住相談センター「ふるさと回帰支援センター」に全国初となる相談員を配置、移住希望者らに情報発信を始めた。17年度からは各地方振興局に移住コーディネーター計7人を配置し、東京事務所に移住推進員を置くなど県内外で取り組みを本格化させた。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う地方移住への関心の高まりを受け、20年度からはテレワーク費用の補助や副業人材の呼び込みなどに注力。新年度は新たに「お試し移住」のモデルをつくり、地域との関係を構築することで移住後の定着につなげる事業に着手する。12市町村はもとより、全県で人口減少が深刻化する中、移住促進は復興創生を進める上で一つの鍵となる。