除染土再生利用、県外実証へ 新宿御苑や所沢が候補地

 

 県内の除染で出た土壌などを一時保管する中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)からの県外最終処分の実現に向け、環境省が取り組んでいるのが土壌の再生利用だ。放射能濃度が基準よりも低い土壌を公共工事などの資材として再生利用する計画で、同省は最終処分量の大幅な減少を期待している。

 中間貯蔵施設には、帰還困難区域で出た土壌を除いても約1400万立方メートルと、東京ドーム約11杯分に相当する土壌が運び込まれる。同省はこのうち、放射能濃度が1キロ当たり8千ベクレル以下の土壌を再生利用する方針。土壌の濃度分布を見ると、約4分の3が基準値以下となっている。

 同省は2016年、南相馬市の仮置き場で除染で出た土壌を使って盛り土を造成する実証事業に着手した。帰還困難区域の飯舘村長泥地区では17年から農地の造成を始めた。資源作物の試験栽培に加え、野菜の栽培や水田での稲作も行い、放射性物質が農作物に移行しないかなどを確認している。一方、南相馬市や二本松市では住民の反対により実証事業が実現しなかった例もある。

 同省は昨年、県外での実証試験の実施を公表した。候補地は環境調査研修所(埼玉県所沢市)と新宿御苑(東京都新宿区)など3カ所。環境調査研修所では、広場に深さ約1メートルの穴を掘って集水シートを敷き、除染で発生した土約20立方メートルを半分の深さまで入れて土をかぶせ、芝張りをする。新宿御苑でも管理事務所の一角に約6立方メートルを埋め、覆土して花壇を造る計画だ。いずれも一般利用者が立ち入らないエリア。周辺の放射線量を測り、土壌に浸透した雨水は一時貯留し、安全性を確認した上で下水道に流す。

 所沢市と新宿区では昨年12月に地元住民向けの説明会を開催。出席者から賛否の声が寄せられ、所沢市では、周辺の自治会が反対の立場を明確にした。

 同省は24年度には最終処分場の面積や構造について実現可能ないくつかの選択肢を示し、25年度以降、最終処分場に関する調査検討や調整を進めるとしている。45年までの県外最終処分という「福島との約束」を果たすために不可欠な土壌の再生利用の促進へ、全国の理解醸成は避けては通れない責務になっている。

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 除染土再生利用 東京電力福島第1原発事故で、県内の宅地や農地から放射性物質を取り除く除染で出た土や廃棄物は、1月末時点で東京ドーム11杯分が中間貯蔵施設に搬入された。環境省は全量そのままの処分は実現性が乏しいとして、除染で発生した放射性セシウム濃度が1キロ当たり8千ベクレル以下の土を再生利用する方針。県内の実証試験では、南相馬市で盛り土を造り、周辺の放射線量に大きな変動はなかった。飯舘村では農地を造成し、収穫した作物の放射性セシウム濃度は基準値を大きく下回った。

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 1338万立方メートルが搬入 15年からの累積量

 県内の除染で出た土壌は各地の仮置き場などで保管された後、2015年3月から順次、中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に運び込まれた。帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の整備に伴い生じた土壌を含め、昨年12月末までに約1338万立方メートルの土壌が搬入されている。

 仮置き場などからの搬出が9割超で完了し、中間貯蔵施設への年間搬入量は19年度の406万立方メートル、20年度の387万立方メートルをピークに減少しつつある。本年度は昨年12月末現在で49万立方メートルとなっている。

 東京都渋谷区とほぼ同じ約1600ヘクタールと広大な中間貯蔵施設に運ばれた土壌などは、受け入れ・分別施設で土と可燃物に分ける。土壌はその後、土壌貯蔵施設で管理、草木類など可燃物は焼却処分で減容化した後、幅1.3メートル、奥行き1.3メートル、高さ1.1メートルのコンテナに詰め、廃棄物貯蔵施設で保管する。

 環境省によると土壌貯蔵施設では約1130万立方メートル(昨年12月末現在)の土壌を保管している。廃棄物の貯蔵量(同)は、コンテナ約1万6千個となっている。