【現場はいま・本紙記者がゆく】ロボ産業、広がるイメージ

 
真新しい機械が並ぶ工場内。吉田工場長は「雇用の創出に貢献したい」と話す=南相馬市

 真新しい機械が大きな音で稼働し、ロボットの部品が手際良く造られていった。産業ロボットの部品加工などを手がけるロボコム・アンド・エフエイコムの南相馬市の工場。金属を加工する際に出たごみを入れるごみ箱は自走式で、いっぱいになると捨てる場所に向けて移動を始める。吉田慶一工場長(51)は「どうすれば安全に効率良く製造できるか、常に考えながら作業を進めている」と説明した。

 東京に本社を置く同社は、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想に伴い福島ロボットテストフィールド(ロボテス)が整備された同市に工場を建設。市復興工業団地でひときわ目立つ青と赤の社名ロゴが掲げられた工場で、2021年に稼働を開始した。「交通の便も良く、ロボテスもあってロボット産業を進めていくイメージが広がった」。天野真也社長(53)は同市に進出した理由をそう語る。

 工場の製造ラインで使うロボットの部品などを手がける。同社は雇用創出や、産業用ロボットの導入による生産性向上を通じて復興に貢献することを企業理念として掲げている。同社によると、現在工場で働いている38人のうち約半数は同市や相馬市など地元から採用されている。

 天野社長は「スマート工業団地を目指している。製造業が起点となり、地域の人たちと一体となって南相馬市、福島県を盛り上げていきたい」と意欲を語った。

 さまざまな機械が並ぶ工場内部を見学しながら、ここに来る前に訪れた浪江町川添地区の風景を思い出していた。イノベ構想の中核拠点となる福島国際研究教育機構の立地場所に決まっているが、研究施設などはまだなく、立地予定地には田畑が広がっていた。

 機構は4月に設立され、今後施設整備が進められる予定。南相馬市のロボテス周辺のような産業集積が期待される。浜通りの産業再生の歩みは着実に進んでおり、川添地区の風景も、次に目にする時には一大産業の拠点を思わせる風景に様変わりしているかもしれない。

 「日本のシリコンバレーをつくりたい」。浜通りの大変革を象徴するかのような天野社長のその言葉が、強く印象に残った。(報道部・副島湧人記者)

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 この連載ルポは、震災と原発事故の教訓を伝承していくため、震災後に入社した記者が担当しました。