【首長に聞く】大熊町長・吉田淳氏 大野駅周辺を「新しい顔」に

大熊町は、中心部だったJR大野駅周辺を含む特定復興再生拠点区域(復興拠点)で昨年6月に東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除された。町は駅周辺を「町の新しい顔」として再開発しており、吉田淳町長は「住宅や人々が集う施設を整備し、にぎわいを取り戻したい」と話す。
―復興の進み具合は。
「復興拠点では23世帯30人が生活を始めた。住宅が不足しているため、アパートの改修や整備を進めている。今はまだ復興が目に見えないが、来年12月には産業交流施設と商業施設が完成する予定で、大野駅周辺ににぎわいを取り戻したい。復興拠点から外れた帰還困難区域について、帰還希望者への対応方針が示されたことは一歩前進と受け止めている。しかし、帰還意向のない町民への対応方針が示されていないのは課題で、引き続き政府に方針の早期明示を求めていく」
―第1原発の処理水の海洋放出が始まる時期が「今年春から夏ごろ」とされている。
「海洋放出に賛成か反対かとよく聞かれるが、単純な問題ではない。多くの専門家らが考えての結論であり、消極的な選択肢だが、現実的にその方法しかない。いろいろな場所で反対の声が根強い。国や東電は処理水に関する丁寧で分かりやすい、透明性の高い情報発信を続けてほしい」
―4月から町内での教育が再開し、12年ぶりに子どもたちの姿が帰ってくる。
「子どもたちの元気な声や給食の香り。震災後の大熊になかったにぎやかな光景が戻ってくる。学校近くに子育て支援住宅を整備し、交通や防犯の面からも受け入れ態勢を整えている。震災から間もなく12年、子どもたちの多くは大熊で暮らした経験がない。地域の大人が積極的に学校と関わりながら、少人数の利点を生かした教育を進めたい」
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