【首長に聞く】双葉町長・伊沢史朗氏 帰還者と移住者が一緒に汗

双葉町は、JR双葉駅周辺などの特定復興再生拠点区域(復興拠点)で昨年8月に東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除され、震災から約11年ぶりに住民の居住が再開した。復興のスタートラインに立った伊沢史朗町長は「町民が何を必要としているかを把握し、課題を一つ一つ改善していきたい」と語る。
―復興の現状は。
「復興拠点では町に帰りたい人が帰れるようになった。町内居住者は約60人にとどまるが、全町避難が長く続いた町にとって格段の進歩だ。しかし、町の85%に今も帰還困難区域が広がり、大きな課題だ。復興は数十年かかる取り組みだ。町民が何を必要としているかを把握し、一つ一つ改善していきたい。新年度には商業施設の整備に着手し、事業者の負担が少なくなるような仕組みを検討していく」
―多くの町民が全国に離散する中、コミュニティーの再生と維持にどう取り組むか。
「震災前のコミュニティーを取り戻すことは不可能だ。まずは町に帰還した人と移住した人が一緒に汗をかき、復興に取り組む精神的なつながりが最も大切だ。避難している町民には県内では各自治体で保健師が動き、心のケアに当たっている。一方、県外では避難先自治体にお世話にならざるを得ないのが現状だ」
―第1原発の処理水の海洋放出が始まる時期が「今年春から夏ごろ」とされている。
「処理水をためるタンクの置き場が不足したことから、この議論は始まった。全国から処理水の陸上保管を求める投書をいただくが、保管継続は問題の先送りに過ぎない。ただし、現状は国民の間で広く理解が進んでいるとは言い難い。これは県外での除去土壌の再利用を巡る問題も同じだ。安全と安心は違う。国と東電には国民が抱く不安の払拭に取り組んでもらいたい」
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