飯館牛...香り良い肉へ飼育米工夫、福島大研究 耕畜連携ブランド化

 

 福島大などが取り組むのは、「和牛らしい甘い香り」を高める脂肪酸「オレイン酸」を多く含むコメを牛に食べさせ、その牛肉の香りの成分を大学にある装置で可視化する研究だ。香りの成分が増えると実証されており、本年度中にも飼育法や分析結果をまとめたマニュアルを作って飯舘村内の畜産農家らに配布する。

 研究ではオレイン酸を多く含み、同村の気候に合ったコメの品種も明らかになった。この品種を村で栽培して牛に与え、「耕畜連携」によってブランド化を目指す。なりわいの再生につなげ、帰還する人を増やす狙いがある。

 研究チームには福島大食農学類の石川尚人教授(64)を中心に筑波大やニチレイフレッシュ、村の畜産農家、農研機構などが加わる。もともと筑波大で砂漠化の研究をしていた石川氏が福島大に食農学類が新設されることを知り、復興の力になりたいと動いたのがきっかけだった。2019年春の赴任から間もない頃、1期生を引率して同村を訪れた石川氏は、原発事故に伴う避難によって途絶えてしまった「飯舘牛」のブランドや村民の帰還が進まない状況を聞いた。その中で、帰還して経営規模を拡大している肉牛農家や、田んぼを維持するために売れなくても毎年飼料米の栽培を続けているコメ農家の姿を目の当たりにし、研究を始めようと決意した。

 ただ、それまでの研究とは全く違う分野で研究費を確保するのは難しかった。方々手を尽くし、学内の重点プロジェクトとして研究開始にこぎ着けたのが2年後の21年。その後も学内外に協力を呼びかけ、徐々につながりをつくっていった。石川氏は「熱意だけでやってきた。何年もかけてようやくここまでたどり着いた」と振り返る。

240611sinsai1303-702.jpg写真=福島大食農学類の石川尚人教授

 研究成果をまとめるに当たっては、香り成分の可視化やマニュアル作成に加え、ブランド牛のニーズのある層など「飯舘牛」の復活後を見据えた提言も盛り込む。将来的には、飯舘牛の料理と県産日本酒とを組み合わせた「テロワージュ」としての発信も見込む。石川氏は「肉牛農家だけでなくコメ農家もと考えたのと同じように、おいしい銘柄がたくさんある県産日本酒とも一緒にブランド化を進めていきたい」と語る。

 震災後に頭数半減

 飯舘牛の歴史は戦後から始まったとされる。戦前、飯舘村内の農家は農閑期に出稼ぎに出る農民が多かったが、戦後に広大な土地を利用した畜産業が発達した。震災、原発事故後は全村避難を強いられた影響などが響き、飯舘牛の生産が一時ストップした。震災前は200軒を超えた村の畜産農家は現在12軒。牛の数も2010年度の村内の肥育、繁殖頭数は約2300頭だったが、現在は半分の千頭ほどに落ちた。価格の下落もあり、県産牛の価格は全国平均と比較して1キロ当たり200円前後低いという。