【首長に聞く】浪江町長・吉田数博氏 町民誇れる古里づくり

 
吉田数博浪江町長

 浪江町は2017(平成29)年3月末に一部地域で避難指示が解除された後、着実に復興の歩みを進めてきた。新年度からJR浪江駅前の再開発事業が本格化するのを前に、吉田数博町長は「町民が誇れる古里をつくりたい」と語る。

 ―震災から11年。町の復興状況をどう見るか。
 「生活環境が少しずつ整い、復興のステージが段階的に上がっている。新年度は(交流、介護、運動の3施設が一体化した)地域公共施設が開所し、大人から子どもまで楽しめる場ができる。また今年は、建築家の隈研吾さんらと連携した浪江駅前の再開発が本格化する。『俺らの駅前を見てほしい』と町民が誇れる古里をつくっていきたい」

 ―来年春に特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除を目指している。
 「末森、室原地区は解除区域に接続しているが、津島地区は町中心部から約30キロ離れ、課題が大きい。津島には今春に町役場の支所を設け、公営住宅など生活基盤の整備を進める。買い物や医療を提供できる環境も整えていきたい」

 ―復興拠点から外れた地域の対応はどうするか。
 「帰還を希望する人が20年代に帰還できるとする政府方針は、一歩前進と捉える。しかし、これまでは面的な除染と解除が行われた経過を踏まえると、町民は期待と不安の両方を抱えている。政府は今後、町民の意向調査を始めるが、地域ごとの意見を尊重した丁寧な対応を求めたい」

 ―水素タウン構想を打ち出す町は今後、水素の利活用をどう進めていくか。
 「町民生活の身近なところから、水素の利便性を実感できる取り組みを拡大させていく。具体的には、水素から作った電気とお湯を町内の宿泊温浴施設や家庭に提供する事業が、新年度にも始まる見通しだ」