「ある程度評価」被災3町村 処理水海洋放出、政府の取り組み

 

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、原発事故で避難指示が出るなどした12市町村のうち実施に向けた政府の取り組みをある程度評価すると考えているのが3町村にとどまることが福島民友新聞社のアンケートで分かった。評価するとの回答はなかった。政府が実施をめどとする2023年春まであと1年。県民の中でも賛否が分かれる中、実施に向けた理解醸成への道は険しい状況だ。

 東日本大震災、原発事故から11日で丸11年を迎えるのに合わせ、12市町村長を対象にアンケートを実施。処理水を巡っては、昨年4月に海洋放出方針を決めた政府のその後の取り組みについて「評価する」「ある程度評価する」「評価しない」「どちらとも言えない」「その他」の5項目から選んでもらい、理由も尋ねた。

 「ある程度評価する」としたのは楢葉、川内、双葉の3町村。第1原発の立地する双葉町の伊沢史朗町長はある程度評価するとしながらも「まだまだ解決するための問題が多い。国民理解へさまざまな機会を利用して情報発信してほしい」とさらなる取り組みを求めた。「評価しない」と答えたのは南相馬市で、門馬和夫市長は「依然として国民や漁業関係者に安全性や風評被害に対する不安の声が多くある」と懸念を示した。

 田村、川俣、広野、富岡、大熊、葛尾の6市町村が「どちらとも言えない」と回答するなど各首長の苦悩もうかがえる。双葉とともに第1原発の立地する大熊町の吉田淳町長は「対話の機会や丁寧な説明が足りない。国民理解が深まったかを定期的に表せるものが少しでも必要」と理解醸成の「見える化」を求めた。

 そのほかでは浪江、飯舘の2町村が「政府に対するコメントはしない」(浪江・吉田数博町長)などとしていずれも選択しなかった。

 処理水処分に向けた理解醸成について、内堀雅雄知事は7日の定例記者会見で「廃炉と汚染水・処理水対策は長期間にわたる取り組みが必要。行動計画に基づき、丁寧な説明を行い責任を持って取り組んでほしい」と国と東電に注文した。

 4首長「反対」 保険料特例措置見直し

 東京電力福島第1原発事故による避難者らを対象に医療や介護の保険料などを全額免除している特例措置の見直しについて、避難指示が出るなどした12市町村のうち4市町村の首長が「反対」との立場を示した。「賛成」「どちらとも言えない」とした首長も段階的な見直しを訴えるなど、政府に慎重な対応を求めている。

 政府は早ければ2023年度からの段階的な縮小を検討している。福島民友新聞社のアンケートでは、見直しについて「賛成」「反対」「どちらとも言えない」の3項目から選んでもらい、理由も尋ねた。

 「反対」と回答したのは田村、南相馬、浪江、葛尾の4市町村。依然として多くの住民が避難し、帰還が進んでいないほか、「住民の生活安定までには相当の年月を要する」(南相馬・門馬和夫市長)ことなどを理由に「被災者、避難者の健康を守る手段として継続すべきだ」(浪江・吉田数博町長)などと必要性を強調した。

 楢葉、川内の2町村は「賛成」としたが、段階的な措置を希望。「どちらとも言えない」としたのは川俣、広野、富岡、大熊、双葉の5町。将来的な見直しや終了に理解を示しつつ「まだその段階にはない」(富岡・山本育男町長)「復興の状況が一律に同じではない」(双葉・伊沢史朗町長)と各自治体の状況に応じた判断を求めた。飯舘は3項目のいずれも選択しなかったが、杉岡誠村長は「住民の生活再建に対する継続的な政策支援が必要不可欠」とした。

 特例措置の見直しを巡っては、西銘(にしめ)恒三郎復興相は福島民友新聞社のインタビューで「(制度の見直しが)見切り発車のような形になってはいけないというのが基本的な考えだ」と述べ、導入の可否を慎重に見極める方針を示している。

【保険料免除の特例措置の見直しについての考え】
「賛成」=楢葉、川内
「反対」=田村、南相馬、浪江、葛尾
「どちらとも言えない」=川俣、広野、富岡、大熊、双葉
※飯舘は選択せず