「ぼくが町の希望の光に」 双葉出身・琴奏者大川さんコンサート
双葉町出身の琴奏者、大川義秋さん(26)は11日、双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で、鎮魂の祈りと復興への願いを込めた凱旋(がいせん)コンサートに臨んだ。「お世話になった町に、音で恩返しがしたかった」。きらびやかな衣装に身を包んだ箏曲界のプリンスは、古里に希望の音色を響かせた。
琴との出合いは震災と原発事故があった11年前の春、避難先の埼玉県の高校だった。双葉中では吹奏楽部に所属し、進学予定だったいわき市の高校でも吹奏楽を続けるつもりだった。しかし、原発事故は思い描いていた道を閉ざした。
当時は放射性物質に関する誤った認識があり、福島のなまりもあったので、誰とも話したくなかった。「震災のことを誰にも触れられたくない」という思いから、部員がいなかった邦楽部に入部した。それが転機だった。講師が弾いた箏曲「春の海」が心に染みた。やはり音楽は人の心を癒やし、寄り添ってくれるものだと思った。それからは、自らの痛んだ心を癒やすように琴に打ち込んだ。「今度はぼくが、傷ついた人たちの希望の光になりたい」。演奏技術は上達し、邦楽界最高峰の箏曲コンクールで、2017年と20年に日本一に輝いた。
伝承館では「見上げてごらん夜の星を」など4曲を奏でた。大川さんは演奏後「町民の悲しい思い、復興への思いを胸に弾いた。これからも双葉を思う曲を奏でていきたい」と語った。
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