【震災11年・備える力】災害語り部/記憶継承、若者の手で

 
只見中の生徒に誘導され、訓練で避難する児童たち。水害の教訓を次世代に継承する取り組みが行われている=2021年7月、只見町

 会津地方に甚大な被害をもたらした2011(平成23)年7月の新潟・福島豪雨から今年で11年。只見町では4日間で観測史上最大となる711.5ミリの雨量を観測した。町内を流れる只見川が氾濫して1人が行方不明となり、全町に避難勧告が出された。町民たちは水害の教訓を後世に残そうと、語り部活動や防災体制の充実に力を注ぐ。

 豪雨災害で、長靴を履いて逃げるのは○か×か―。只見町の只見中で昨年7月に行われた地域合同防災訓練で、同校の生徒はクイズ形式で防災の知識を伝えた。「答えは、靴の中に水が入って動きづらくなったりするので×です」。相手は、豪雨被害を経験していない朝日小(同町)の児童だ。

 生徒はこの日のため、被害に遭った朝日、只見、明和の3地区の住民から当時の様子を聞き取った。その際にまとめた資料を基に、語り部として水害の恐ろしさや備えの重要性などを説明。避難訓練では児童の誘導や人員確認なども行い、防災意識を高めた。

 担当教諭の目黒英樹さん(51)は「子どものころから自発的に学ぶことで、災害に備える心が育まれる」と教え子を見守る。語り部活動は今年も行い、小学校低学年や園児にも分かりやすく伝えるため、紙芝居の説明も取り入れていくという。

 記憶の継承へ、町も取り組みを進める。昨年7月、只見中などとは別の防災訓練を実施。町職員や区長、消防団員らが参加し、避難が必要な住民の情報を地図上で確かめた。豪雨災害では、町内の一部集落が孤立して住民の安否情報が錯綜(さくそう)した経緯があり、改めて連携体制を確認した形だ。今年は、只見中などとも連携した防災訓練を検討しているという。

 また、町は昨年4月、災害発生時にホームページの画面が防災情報を表示するページに自動で切り替わるシステムも導入した。各地区のハザードマップを掲載した上で、刻々と変わる気象情報や河川の水位、防災情報などを随時更新し、住民の迅速な避難につなげたいという。

 「『想定を超えていた』は通用しない」と、町内では各地区の区長や消防団が中心となり、早期の避難を呼び掛ける体制も整備された。災害の教訓を後世に伝えるため、町を挙げた取り組みが進んでいる。=おわり(この連載は大内義貴、鹿岡将司、高崎慎也、中田亮、緑川沙智、三沢誠が担当しました)