葛尾に国内最大エビ養殖場 7社出資のHANERU社、24年度出荷へ

 
(上)村産業団地に整備中の実証試験のプラント。新年度から段階的にプラントを増設する計画だ=23日午後、葛尾村野川字湯ノ平(下)HANERU葛尾が陸上養殖を始めるバナメイエビ

 葛尾村で国内最大規模のエビの陸上養殖事業が始まることが分かった。同村の株式会社HANERU(ハネル)葛尾が村産業団地に養殖場を整備、食用として広く使われるバナメイエビ養殖の実証試験を4月から始める。同社は段階的に規模を広げ、2024年度の出荷を目指す計画で、村復興や新たな特産化による活性化、雇用創出による移住促進につなげる考えだ。

 同社は上下水道コンサルタント大手の日水コン(東京都)や水産加工品卸の山菱水産(いわき市)、三菱電機(東京都)、産業用ガス商社の巴商会(同)、陸上養殖水産ベンチャーのイクラス(広島県)など7社が出資し、今年1月に設立した。

 産業団地の敷地2万平方メートルに養殖施設や食品加工場などを整備。約2年間の飼育試験を経て年間176トン(880万匹相当)を生食用、冷凍用として出荷する。年間の出荷量は国内最多となる見通しで、約20人の雇用を見込む。

 寒冷地での成育検証

 同社によると、国内で消費されるバナメイエビの大半は輸入物という。実証試験では、葛尾の寒冷な環境下で成育するかどうかなどを検証。深井戸からくみ上げ太陽熱を利用して温めた地下水を使って養殖し、安全・安心でおいしさを売りにした国産エビとして出荷する。実証試験で育ったエビは村内での試食会などで提供する予定。

 社名の「ハネル(はねる)」は相馬地方の方言で「走る・駆ける」の意味。エビが元気よく跳ねるように葛尾から国内外に走りだしたいとの思いを込めた。同社は養殖事業のほか、日水コンの知見を生かして村の上下水道の維持管理事業も展開する予定。松延紀至社長(48)は「原発事故からの復興途上にある村で産業をつくり、若者が戻りたい、住みたいと思える活気ある村の実現に貢献したい」と話した。