避難者、孤立させない 社協、地域住民との「つなぎ役」に

 
今後の活動内容などについて話し合う避難者地域支援コーディネーターら

 東京電力福島第1原発事故から11年が過ぎ、県内の復興公営住宅で、避難者と地域住民のつながりの希薄化が問題となっている。そうした中、県社会福祉協議会は本年度、避難者が現在の居住地で安心して生活が送れるよう「避難者地域支援コーディネーター」を新設。従来の個別相談支援に加え、新たに避難者と地域住民の結び付きを強化する「点から面への支援活動」に乗り出した。

 「避難者の中には地域に溶け込めず、『このまま仮住まいを続けていてもいいのかな』と不安に思っている人もいる」。県社協で避難者生活支援・相談センター長を務める佐藤正紀さん(49)は復興公営住宅で生活する避難者の心境を代弁する。

 県内では震災後、各市町村社協に配置された「生活支援相談員」が中心となり、避難者の支援を行ってきた。戸別訪問したり、避難者同士の交流会を開いたりして避難者の孤立を防ぐ活動を展開してきた。

 しかし、原発事故から11年が過ぎ、避難者を取り巻く住環境は大きく変化した。借り上げ住宅などから復興公営住宅に移り住む人や避難先で自宅を再建する人が増えた。周囲に顔なじみがいないような環境での生活に加え、「高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響もあり、避難先で新たな人間関係を築けずに孤立する人が増えている」と佐藤さんは指摘する。

 このような課題を解決しようと新設されたのが「避難者地域支援コーディネーター」だ。17市町村社協の生活支援相談員から26人が任命された。復興公営住宅が立地する場所の自治会や民生委員らと情報交換しながら、避難者と地域住民の交流の場としてサロンを企画したり、地域の祭りへの参加を促したりする。

 郡山市で21日、初の連絡会議が開かれ、コーディネーターらが役割や方針を確認し、連携を深めた。佐藤さんは「帰還するかしないかの問題は別とし、避難者が現在の住まいで安心して暮らせるよう、地域支援を充実させていくことが欠かせない」と語った。(阿部二千翔、熊田紗妃)

 「交流広がる活動に」

 「見守りや声かけを強め、地域住民との交流が広がるような活動をしていく」。避難者地域支援コーディネーターに任命された南相馬市社協の西千晶さん(40)は意気込む。

 今後は地域住民と避難者が交流するサロンなどを定期的に開催していく考えだ。2011年から生活支援相談員として避難者を戸別訪問しており、孤立を強める1人暮らしの高齢者が多いと実感しているという。

 13年から富岡町社協いわき支所で生活支援相談員を務める馬目美香子さん(56)も避難者地域支援コーディネーターに任命された一人。今後について「地域のキーパーソンと避難者の橋渡しをしていきたい」と話した。