自慢の洋食で飯舘に笑顔 佐藤さん空き家活用し出店、復興後押し

 
「飯舘の食材を使った料理でお客さんを笑顔にしたい」と意気込む佐藤さんと飯舘産牛肉を使った自家製ハンバーグ

 飯舘の復興を後押しできるようなお店に育てていきたい―。飯舘村二枚橋地区で空き家を改装して整備が進められてきた洋食レストランが完成し、5日、関係者向けのプレオープンを迎えた。オーナーシェフとして腕を振るうのは村出身の佐藤雄紀さん(31)=福島市在住。真新しいコックコート姿で、自慢の料理を味わう人たちの笑顔を見守りながら決意をにじませた。

 佐藤さんは小学生の時の調理実習を機に、料理の魅力に取りつかれ、中学、高校と料理人になる夢を持ち続けてきた。日本調理技術専門学校(郡山市)を卒業し、福島市の結婚式場や国見町の道の駅などで料理の腕を磨いてきた。

 専門学校を卒業した2011(平成23)年、飯舘村は東京電力福島第1原発事故の影響で全村避難となった。「17年の避難指示解除後も村に戻る人は少ない。村で自分のお店を持つのは厳しいと思っていた」と佐藤さん。ただ、村役場で復興業務に従事する同級生や、村内に誕生し、にぎわう道の駅など、復興へと歩む村の姿が頭から離れなかった。

 「村のために何もできていない。料理を通じて、自分を育ててくれた村に恩返しがしたい」。生まれ育った古里への思いを強くした佐藤さんは一念発起。地元住民の協力を受けながら約2年間かけ、レストランの開業に向けて奔走してきた。

 レストランは県道原町川俣線を見下ろす緑に囲まれた高台にある。名前は「田舎レストラン La Kasse(ラ カッセ)」。「どうぞ食べて」を意味する方言「かっせ(食わっせ)」にちなみ名付けた。地元産食材を使って本格的な洋食を提供する。席数は18席で、今後はテラス席も開放する予定という。

 「いらっしゃいませ」「ゆっくり召し上がってください」―。プレオープンを迎えたこの日、佐藤さんは慌ただしく調理場とホールを行き来していた。提供されたのは飯舘産牛肉を使ったハンバーグやオムライス。同村の農業佐藤博さん(71)は「地元にすてきなレストランができて感激。料理も景色も堪能できた」と笑顔を見せた。

 村では来春、帰還困難区域で特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除が予定されている。念願の夢をかなえた佐藤さんは、気持ち新たに古里の未来像を語った。「村本来の姿が戻りつつあるのを強く感じる。レストランに気軽に足を運んでもらい、若い世代など多くの人が集う村になってほしい。やっぱり、料理人の仕事はいいですね」

 10日、本格オープン

 レストランは10日、一般向けに本格オープンする。住所は飯舘村二枚橋字本町193の3。営業時間は午前10時30分~午後7時。定休日は日曜日の午後と月曜日。問い合わせは佐藤さん(電話080・5569・4336)へ。