12年越し...「ありがとう」 山内さん、東京に避難時の恩人招く

 
市川さん(左)に復興が進む楢葉町の様子を紹介する山内さん=11日午後、楢葉町

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11年5カ月となった11日、楢葉町の山内悟さん(67)は、原発事故直後に避難先の東京都内でガソリンを譲ってくれた会社員市川誠さん(47)と約12年越しの再会を果たした。山内さんが営む同町のそば店「そば処(どころ) やぶそば」に招待し「あの時はありがとうございました」と直接感謝を伝えた。

 山内さんは原発事故後、家族で都内に避難。避難場所近くのガソリンスタンドで給油しようした際に「福島やいわきナンバーの車には給油できない」と拒まれたという。途方に暮れていると、近くで給油していた市川さんが、自身が携行缶に入れて確保したガソリン全てを山内さんに譲った。

 山内さんは市川さんの連絡先を書いたメモを避難生活の混乱の中で紛失したものの、昨年8月に発見。すぐに電話し「お礼に自分の店に招きたい」と伝えた。

 この日、家族4人で店を訪れた市川さんは、山内さんが丹精したそばを堪能した。山内さんは「ガソリンが少なく、店員からの言葉にショックを受けた。それを知った市川さんが親切に分けてくれて、ありがたかった」と頭を下げた。

 市川さんは「あの時はみんなが大変だった。自分は何も特別なことをしていないが、妻と(山内さんが)元気にしているかなと話していた」と元気そうな山内さんの表情を見て安堵(あんど)した様子。2人は善意がつないだ縁を大切に今後も交流することを約束した。