「野行の宝財踊り」復活 葛尾・震災後初、ふたば未来高OGら尽力

 
野行の宝財踊りを復活させたふたば未来学園高演劇部員ら=21日午後、葛尾村

 葛尾村野行(のゆき)地区に約100年前から伝わる伝統芸能「野行の宝財(ほうさい)踊り」が21日、東京電力福島第1原発事故による中断を経て村内で復活した。東日本大震災以降初上演の立役者になったのは、ふたば未来学園高演劇部員と卒業生。出演者は役に応じた衣装をまとって踊りを披露し、集まった村民らと再開の喜びを分かち合った。

 宝財踊りは1915(大正4)年、野行地区を開墾した地域住民らによって始まった。昭和初期を最盛期に一時は途絶えたが、住民有志が83年に保存会を設立して再出発した。着物やわらじなどを身に着けた踊り手と笛方に分かれ、円を描くように1列になって踊るのが特徴だ。村の無形民俗文化財に指定されている。

 しかし、野行地区は原発事故で全域が帰還困難区域となり、住民は県内外に散り散りに避難した。宝財踊りは、後継者の不在による消滅の危機に立たされた。

 復活に向けて中心的な役割を果たしたのは、野行地区出身で同校演劇部OGの半沢詩菜(うたな)さん(18)=常磐大1年。半沢さんは高校の教育プログラムの一環で古里について学ぶうちに「古里を活性化させたい」と復活を志し、仲間を募った。今年2月に上演する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期した。

 葛尾劇「宝宝宝(ほーほーほー)」と題し、一般社団法人葛力創造舎の主催、同校演劇部の協力で演じた。2部構成で、1部は広谷地集会所で宝財踊り、2部は旧葛尾中校舎で村民の古里復興への思いを紹介するミニ演劇を披露した。宝財踊りでは半沢さんら踊り手が右足を上げては3歩進み「ホーホー。ソーレ!」とかけ声を上げる独特の踊りを繰り広げた。

 半沢さんは「やっと実現できた。村民に喜んでもらえてうれしい」と笑顔を見せた。震災前に一度だけ宝財踊りを見たことがある同村広谷地地区の松本邦久さん(63)は「若者が復活させてくれて感無量。原発事故で若者が減った地域の伝統継承に向けた一つの在り方かもしれない」と語った。