駐在さん、住民と信頼 勤務予定の梅宮さん、双葉歩き...町守る

 
浪江町での防犯活動に参加する梅宮さん(中央)。30日からは駐在所で双葉の安全安心を守る

 「双葉に行くんでしょ。向こうには何人ぐらい住むの」「行ってみないと分かりませんけど、私と妻の二人は住みますよ」。30日から双葉町の双葉駐在所に勤務する梅宮広貴さん(40)の周りには、人が集まる。26日夕方に浪江町で行われた防犯活動に参加した際も、すぐに顔見知りが声をかけてくる。住民との間に築いた信頼関係が見て取れる。

 梅宮さんは、2020年3月から駐在所員として双葉署に赴任した。しかし、国道6号沿いの駐在所周辺の避難指示は解除されておらず、同署浪江分庁舎を拠点に活動を続けた。先行解除された双葉町中野地区の事業所などを巡る一方、いわき市の双葉町役場を訪れるなどして避難先の双葉町民と関係を深めてきた。人柄に触れた浪江町民からも親しまれるようになった。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11年を経て、30日に駐在所の機能が再開される。梅宮さんは「一般の警察業務では、連絡があれば地図を見て駆けつけることができます。でも、双葉地方では建物が壊されたり、建てられたりしているので『最新の地図』というものがありません」と指摘する。町を歩き、人と出会い、頭の中で防犯の地図をつくっていく。

 「駐在所は地域に住んでの駐在所です。ようやく本来の形になる。どこに誰が住んでいるかというようなことは、他の警察官に負けるわけにはいかないですよ」。帰還する人、一時帰宅で訪れる人、新たに双葉町民になる人、誰もが地域の安全を願う。梅宮さんは確実に準備を進めてきた。30日の避難指示解除に合わせ、駐在所は再び動き出す。

 「本来の業務ではないかもしれないけど、自分が歩くことで双葉のコミュニティーをつくる役割も担うことができればとも思うんです」。熱く、そして思いやりに満ちた決意が、マスクを越えて伝わってきた。

29日に開所式 双葉駐在所の開所式は29日午前10時から、双葉町新山の現地で行われる。