避難指示解除...前へ進む 双葉・復興拠点、居住ゼロ自治体解消

 

 双葉町が町内の帰還困難区域内に整備してきた特定復興再生拠点区域(復興拠点)は30日午前0時、避難指示が解除された。東京電力福島第1原発が立地する同町は県内の被災自治体で唯一、原発事故による全町避難が続いていた。今回の避難指示解除を受け、東日本大震災から11年5カ月を経てようやく住民の居住が可能となり、居住人口ゼロの自治体は解消した。

 双葉町の復興拠点はJR双葉駅を中心とした約5.55平方キロで、駅前には町役場の新庁舎が完成した。新庁舎での業務開始は9月5日を予定している。駅の西口には帰還した町民や移住してくる人が住む「駅西住宅」の整備が進み、第1陣の入居を10月に控えている。

 町の住民登録者数は7月末現在で5574人となっている。このうち震災前に復興拠点の範囲内に住んでいた人は、全体の約60%に当たる3347人。しかし、震災から時間が経過して老朽化した建物の解体などが進み、避難先に生活基盤を整えた町民も多いことから、どれだけの人が帰還するかは見通せない状況だ。

 町は5年後の人口を約2000人とすることを目指しており、住民が帰還しやすい環境を整えることが課題となる。

 2020年に避難指示が先行解除された旧避難指示解除準備区域の中野地区は、雇用の場を確保するため復興産業拠点として整備が進められてきた。町はこれまでに20社以上と立地協定を締結しており、既に13社が操業を開始している。新生双葉のまちづくりには、これらの企業で働く「新住民」との共生も不可欠だ。

 一方、今回の復興拠点と先行解除された地区を合わせても避難指示が解除された面積は7.75平方キロで、町全体の約51.42平方キロに対して約15%にとどまっている。残りの約85%は帰還困難区域のままとなっており、町は政府に避難指示解除に向けた働きかけを強めていく考えだ。

 伊沢史朗町長は30日、報道陣の取材に「(復興拠点の)避難指示を解除して終わりではなく、町はまさにマイナスからのスタート。(解除により町内に)居住できる喜びよりも、町民の皆さんが安心して住めるようなまちづくりをどう進めていくかという気持ちが引き締まる思いだ」と語った。

 残りは3町村

 復興拠点を巡っては、県内6町村のうち、葛尾村と大熊町、双葉町で避難指示が解除されたことにより、残りは富岡、浪江、飯舘の3町村となった。

 いずれも来年春ごろの解除を目指して準備が進められている。