富岡町、拠点解除へ住民と11月意見交換 23年春に向け準備本格化

 

 富岡町は、町内の帰還困難区域に整備している特定復興再生拠点区域(復興拠点)を巡り、来春の避難指示解除に向けた住民との意見交換会を11月に開催する方針を固めた。除染と上下水道などのインフラ復旧が進んでいることを受けての対応で、避難指示解除への具体的な動きが本格化する見通し。

 7日の町議会全員協議会で示した。夜の森地区を中心とした約390ヘクタールの復興拠点では通行規制が緩和され、4月からは住民の準備宿泊も行われてきた。

 町は、町政懇談会を活用して避難指示解除を巡る意見交換会を開く。10月からの準備宿泊者への個別訪問と併せて、生活環境の向上に必要な対策を聞き取って今後の整備に反映させる。

 買い物環境の整備に向けては、復興拠点内での移動販売の実施に加え、公設による固定店舗の開設を検討する。事業所としての利用を後押しするため、復興拠点内の土地利用の在り方も見直す方針だ。また、町は新たに、準備宿泊の対象に新規転入希望者を加えることを町議会に報告した。

 拠点外意向調査は10月議論

 富岡町は7日の町議会全員協議会で、帰還困難区域の復興拠点から外れた小良ケ浜、深谷の両地区の住民を対象に、帰還意向調査の実施方法について話し合う意見交換会を10月上旬に開くことも明らかにした。

 復興拠点外を巡っては、政府が2020年代に帰還意向に応じて必要な箇所を除染し、避難指示を解除する方針を示している。大熊町と双葉町では既に復興拠点外の住民に対する意向調査が始まっている。富岡町は意見交換会を通じて、住民の意向を把握できるような調査の在り方を探る。

 小良ケ浜、深谷の両地区の中でも主要道路や墓地、集会所などは「点」や「線状」の復興拠点に位置付けられており、町は隣接する夜の森地区と同様の避難指示解除を目指している。このため、放射線量の低減を図る必要があり、道路などの周辺を除染する「外縁除染」の準備が進んでいる。

 現在の計画では、外縁除染の範囲には住宅や農地なども含まれている。町は復興拠点外の地域について、全域除染による避難指示解除を政府に求めていることから、これらの土地の取り扱いに関しても政府との協議が本格化する見通し。

 慰霊碑を23年建立

 富岡町は、町独自の「東日本大震災慰霊碑」を震災から丸12年となる来年3月11日に建立する方針を固めた。津波からの避難の重要性を教訓として伝えるため、建立場所には津波が到達した地点周辺の高台が検討されている。

 7日の町議会全員協議会で説明した。現段階では、JR富岡駅近くの太平洋を望む高台が候補地となっている。碑は高さ約2メートル、幅約6メートル、奥行き約2.5メートルの規模を計画しており、被災や東京電力福島第1原発事故による全町避難の経験を伝え、復興を進めていく決意などが刻まれる見通し。