楢葉・浜城地区の地蔵堂「復活」 落慶・開眼式、住民集う場に

 
地域住民が参加し落慶・開眼式が行われた地蔵堂

 東日本大震災の津波で流された楢葉町前原の浜城地区の地蔵堂が再建され、震災から11年半となった11日に落慶・開眼式が行われた。地蔵堂は、大半が災害危険区域に指定され、住宅の再建ができない状況になっている浜城地区にかつて人々の暮らしがあったことを伝えるとともに、今は県内外で生活する地区住民らが集う場としてよみがえった。

 地蔵堂は、地区を流れる山田川で亡くなった子どもの供養を目的に、江戸時代の享保年間(1716~35年)に建てられたとされる。津波被災からの再建は、町職員の松本昌弘さん(37)を発起人に、住民や関係者がプロジェクトを組んで進めてきた。

 津波でも残った台座の上に再建された。敷地内にあった石碑なども建て直され、今後、地蔵堂の由来を示すプレートも設置される。

 震災前に浜城地区に住まいがあった19世帯はこれまでに2回集まり、それぞれ1体、木彫りの地蔵像を作った。式の当日、住民らは地区の徳林寺で地蔵像の額に「白毫(びゃくごう)」を入れて完成させ、太平洋に近い地蔵堂に移動し、それぞれ奉納した。中心に安置された石の地蔵像を含めた20体が堂内にそろった。

 徳林寺の松本丈弘住職により厳かに仏事が行われた。住民らは、震災から大きく変化した風景の中で、地区の心のよりどころだった地蔵堂の再建を祝った。昌弘さんは「自分たちは地区に戻れないが、先人の暮らしがあったことを忘れないための地蔵堂は再建することができた。震災の教訓などを後世に伝えていきたい」と語った。