デニムで絆「リメーク」 被災地に再び若者を、富岡に専門店開設

 
オープンに向けて準備を進める斎藤さん(右)と小林さん。「デニムを通じて人のつながりをつくりたい」と意気込む

 富岡町のJR夜ノ森駅西側に12日、リメークデニムの専門店「YONOMORI DENIM(ヨノモリデニム)」が先行オープンする。リメークデニムは廃棄寸前の生地をつなぎ合わせ、新たな一品によみがえらせた製品で、希少性やファッション性の高さから、若者を中心に注目されている。「原発事故による避難でばらばらになった人たちをデニムでつなぎたい」。富岡に思いを寄せる人たちが出店計画を進めており、さまざまな人の手を経てつなぎ合わされたデニムが、被災地に人を呼び込むきっかけとして生まれ変わる。

 専門店は全国的にも珍しく、店内にはリメーク品を制作する会社から取り寄せたジャケットやズボン、バッグ、エプロンなどが並ぶ。「幅広い年代に愛される富岡にしたい」。開店のきっかけは代表の斎藤裕喜さん(43)が町の将来について考えたことだった。

 店の近くには斎藤さんが社長を務める福島環境研究開発(いわき市)の富岡事業所があり、町内にある太陽光発電施設の管理などを手がけてきた。東京電力福島第1原発事故による避難指示が帰還困難区域を除いて解除され、復興が本格化する中、斎藤さんは2020年に地元いわき市から移住し、事業所近くに交流拠点を開設した。

 集まってくれる住民に感謝しつつも、若い世代が少ない町の現状が気がかりだった。

 どうすれば若い世代が足を運んでくれるのか。思い付いたのは幅広い世代が愛着を寄せるデニムだった。「デニムを通じてもう一度、人のつながりをつくりたい」。斎藤さんの思いに共感した社員4人が店を運営する。

 運営に携わる一人で、同町夜の森地区出身の小林奨さん(27)は「富岡でも新しい挑戦ができることを発信していきたい」と思いを語る。原発事故後、県内外を転々とし、新しい道を探す中で斎藤さんと出会った。「町の将来のためには僕と同じ世代の人が町に残らないといけない」。接客を通じて復興の現状なども発信していくつもりだ。

 「環境問題に目を」

 店には斎藤さんのもう一つの願いも込められている。アパレル産業は大量生産・廃棄が主流とされており、斎藤さんは「環境問題に目を向け、関心を持ってほしい」とリメーク商品のみを扱うことにこだわった。

 双葉郡は再生へと一歩ずつ前進しているが、衣料品を扱う店はまだ限られているのが現状だ。インターネット販売が広く普及し、店に行かなくても商品を購入できる中、斎藤さんはあえて住民が少ない被災地で挑戦し、業界や地域に一石を投じようとする。「正直、東京や仙台の方が利益は出る。でも、この場所でやるからこそ、意味がある。商品だけでなく、町や双葉郡への思い出も一緒に持ち帰ってほしい」(三沢誠)

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 【メモ】住所は富岡町本岡字清水前122の17。電話0240・41・9011。12日正午に先行オープンする。営業日や営業時間は12日の客の入り具合などを踏まえて決める。