「復興拠点」 避難指示解除へ大詰め
原発事故による帰還困難区域のうち、除染やインフラ整備を進め、再び人が住めるようにする特定復興再生拠点区域(復興拠点)は今春ごろには、全ての避難指示が解除される公算となっている。復興拠点の現況は【表】の通り。復興拠点の整備を計画した6町村のうち、葛尾、大熊、双葉の3町村で昨年、避難指示が解除されており、残りの富岡、浪江、飯舘の3町村では避難指示解除に向けた準備が大詰めを迎えている。
月内にも最終報告書
【富岡町】夜の森地区を中心とする約390ヘクタールの復興拠点ではインフラ整備と除染が大部分で完了したとして、今春の避難指示解除が現実的になっている。
町除染検証委員会の河津賢澄委員長は昨年、避難指示解除の目安となる(被ばく線量)年間20ミリシーベルトをおおむね下回っているとの見解を示した。今月中にも次回会合を開き、町に最終報告となる報告書を提出する。
一方、復興拠点から外れた小良ケ浜、深谷両地区のうち主要道路や墓地などは「点的・線的な拠点」と位置付けられているが、環境省の除染が間に合わないとして、9月以降に段階的に解除される見込みだ。
準備宿泊8世帯15人
【浪江町】町は今春ごろの避難指示解除を目指す。住民説明会を今月30日~2月5日に県内外7会場で開き、住民の意見を踏まえて解除日を判断する。
復興拠点は室原、末森、津島の3地区の一部計661ヘクタールのほか、特産の大堀相馬焼の保全を進めるために大堀地区の各窯元も含む。
町によると、復興拠点の住民登録数は333世帯914人。昨年9月に始まった準備宿泊には8世帯15人が申し込んでいる。復興拠点内では多くの世帯で家屋解体が進んだ一方、帰還を希望する世帯では家屋の改築が進む。津島地区では解除を控え、10戸の住宅団地の建設が進められている。
集会所、年度内完成へ
【飯舘村】長泥地区の復興拠点について、今春とされていた避難指示の解除時期が大型連休ごろの見通しとなった。村は、今月に予定している村除染検証委員会の最終報告を踏まえ、村議会や住民への説明、国や県との協議を経て解除日の合意を目指す。
186ヘクタールの復興拠点では住環境を整える「居住促進ゾーン」と営農再開を見越して農地を復活させる「農の再生ゾーン」でインフラ整備が進められている。自宅を解体した住民が準備宿泊の際に利用できる拠点内の集会所について、本年度内の完成を予定している。
起業支援拠点が始動
【大熊町】JR大野駅周辺など震災前までの町の中心部が復興拠点となり、廃校になった旧大野小校舎を活用した起業支援拠点「大熊インキュベーションセンター」が始動した。町は2024年度をめどに、駅周辺に産業や商業など各種施設を整備する。
野行地区1世帯帰還
【葛尾村】6町村で最初に解除された野行(のゆき)地区では昨年12月時点で30世帯81人が住民登録しており、1世帯が帰還した。村は復興拠点から外れた野行地区の小出谷集落の4世帯10人に関し、隣接する浪江町の小伝屋集落と一体的な除染と家屋解体を国に求めている。