ダルマ市...双葉帰還 12年ぶり町内開催「この活気、待っていた」

新春恒例の「双葉町ダルマ市」が7日、町内で12年ぶりに始まった。東京電力福島第1原発事故後も、避難先のいわき市で続けられてきた伝統行事が古里に戻り、開催場所のJR双葉駅前は多くの人でにぎわった。町によると、初日の来場者数は想定を上回る1000人超に上った。県内外の避難先から駆け付けた町民は、かつての顔なじみとの再会を喜び、古里の絆を確かめ合った。
「この元気なにぎわいを待っていた」。実行委員長で町商工会長の岩本久人さん(65)は感慨深げに語った。伊沢史朗町長も「町内でダルマ市ができることは喜びが全く違う。町民の皆さんが笑顔で過ごせる1年になればうれしい」と声を弾ませた。
ダルマ市は約300年前の江戸時代から続く町を代表する伝統行事。原発事故による全町避難で存続が危ぶまれたが、町民有志でつくる任意団体「夢ふたば人」が2012年から、いわき市の仮設住宅や復興公営住宅で開催。伝統を守り続けてきた夢ふたば人会長の中谷祥久さん(42)は「やっと双葉で再開できてうれしい」と会場を見つめた。
今回は昨年8月に町内の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除されたことに伴い、地元開催が実現。原発事故前と同様に、町や町商工会、町観光協会などでつくる実行委員会が主催する形となった。
会場には、縁起物「双葉ダルマ」などを販売する露店が並んだ。避難先のいわき市から訪れた町民の山田史子さん(65)はダルマを三つ購入し「双葉が再び元気になることを願って神棚に飾りたい」と笑顔を見せた。
ダルマを製造、販売するJA福島さくらふたば地区女性部双葉支部長の石田恵美さん(68)は「500個ほど準備したダルマは半数以上も売れてびっくり。あすは完売だね」と笑った。
1年の豊年満作や商売繁盛を占う恒例の「巨大ダルマ引き」では、町民ら来場者が北と南の二手に分かれ、体長約3.5メートル、重さ約600キロのダルマを引き合い、かけ声が響き渡った。
また会場脇の町役場新庁舎では「はたちを祝う会」が同時開催され、ダルマ引きには20歳を迎えた振り袖を着た若者たちの姿もあった。横浜市の大学生田中奏子さん(20)は「懐かしい顔に再会できた。将来は保育士になって福島に貢献したい」と古里で決意を新たにした。
最終日の8日は、町民俗芸能発表会・芸能発表会と同時開催される。