消防団員、体制確保へ活路 双葉郡、女性参加や機能別業務新設

 
消火栓の確認作業を行う消防団員=富岡町

 東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされた双葉郡で、消防団の体制確保が難しい状況が続いている。多くの住民が避難先に居住していることから、夜間と週末の人員不足や初動の遅れが懸念されている。課題解決に向け、各町村は女性の活動参加を促したり、活動内容を限定して募集したりして、活路を見いだそうとしている。

 「今の人員では正直足りていない。特に土、日曜日や祝日、夜間帯は心配だ」。富岡町消防団長の末永博幸さん(63)はそう話す。同消防団は団員の7割以上が町外の避難先に居住しており、訓練や夜警といった活動のたびに町に通っているのが現状だ。

 仕事の都合で平日は町内にいるが土、日曜日は避難先の自宅に戻る隊員もいるため、週末はさらに町内の団員が減ってしまうという。

 人手が手薄な夜間に出動が必要になった場合、同消防団では町内在住者が対応に当たるほか、いわき市や南相馬市など、より富岡町に近い避難先に居住する隊員が順に出動する体制を整えている。

 だが到着まで1時間近くかかる場合があり、初動面で不安が残る。幸いにも夜間の出動はまだないが、末永さんは「初期対応はどうしても町内に住んでいる少数の隊員に頼らざるを得ない」と課題を口にする。

 団員数は各町村で減少している。活動の時間や内容を限定した「機能別団員」の新設により、団員数が増えたケースもあるが、団員不足は共通の悩みだ。

 大熊町の担当者は「住民帰還が進み、事業所の進出が加速すれば、ますます今のままでは対応できない。どうすべきか...」と不安を募らす。

 一方で避難指示解除が比較的早かった町村のうち、楢葉町では21年4月、女性のみで組織する「婦人消防隊」を「第8分団」に格上げした。訓練参加が主だった活動について、緊急時には初期対応に当たるようにした。

 第8分団の団員は現在15人。体制確保とともに、「消防団は男性」という考えからの脱却を図るのが狙いだ。町の担当者は「女性でも活動できることを知ってもらい、少しでも団員確保につなげていきたい」と力を込める。

 また、昨年8月に特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除された双葉町では同10月、活動内容を限定した機能別団員を新設。町内企業の従業員に加入を呼びかけ、団員の確保に奔走している。

 消防団の体制確保に向け、双葉地方消防本部の松本孝一消防課長は「女性消防団のように加入のハードルを下げる取り組みは非常に重要。まずは消防団に興味を持ってもらうことから始めないといけない」と話す。(三沢誠)

双葉郡8町村の消防団員数