町民「古里に帰りたい」 浪江町住民説明会、除染進め方に不満

 
住民説明会であいさつする吉田町長=福島市

 東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)を巡り、30日に福島、仙台両市を振り出しに始まった浪江町の住民説明会。町が3月末までに復興拠点の避難指示を解除する方針を示したのに対し、参加した町民からは避難から間もなく12年の月日が過ぎる今も「古里に帰りたい」と切実な声が上がった。一方、除染の在り方を巡っては、不安を訴える意見も多く出された。

 「いくら宅地周辺がきれいになっても、山が除染されていなければ子どもたちを帰すわけにはいかない。帰るのは高齢者ばかりで、津島は存続できるのか」。津島地区から避難し、福島市で生活を再建させた三瓶春江さん(62)は同市での説明会に出席し、除染の進め方に疑問を呈した。

 津島地区に残る自宅周辺は復興拠点に含まれ、除染が終わったが、建物は年内中にも解体する予定だ。説明会後、報道陣の取材に応じた三瓶さんは、帰還するかどうかは決めかねているとした上で「子どもたちが安全に住める環境になればすぐにでも帰りたい。津島が大好きだから」と思いを語った。

 福島市の会場には、復興拠点から外れた津島地区の住民の姿もあった。高齢女性は拠点外の地域について避難指示解除の具体的な時期が示されていないことに不満を示し「いくら年を取っても帰りたい。津島の土地を子どもや孫に引き継ぐため、国はちゃんと除染と(家屋などの)解体をしてほしい」と訴えた。

 マイクを取った吉田栄光町長は隣席に並ぶ政府関係者の方を向き「こうして今も帰りたいと思う町民がいるんですよ。(国が)責任を持って除染と解体を進めてほしい」と語りかける一幕もあった。

 参加者からは、農地の担い手が高齢化し、保全管理が行き届かなくなることへの不安の声も聞かれた。

 説明会は2月5日まで、県内外7会場で開かれる。