窯の火、浪江でつなぐ...大堀相馬焼・陶吉郎窯、古里で再開へ

 
「大堀相馬焼の伝統を次世代につなぎたい」と意気込む近藤さん

 東京電力福島第1原発事故で浪江町からいわき市に避難し、伝統の大堀相馬焼を継承している陶吉郎窯の陶芸家近藤学さん(69)は、浪江町大堀地区の工房を再開するため準備を進めている。今年は工房や窯場の復旧に努め、早ければ来年から制作を始めるつもりだ。近藤さんは「帰還に向けた一歩。大堀相馬焼の伝統と窯場の火を伝えていく」と意気込む。

 近藤さんは原発事故後、避難を強いられながらも、拠点を移したいわき市で創作活動に取り組んできた。2011(平成23)年6月には、自宅兼工房で作陶を再開し、美術展への出展などを通じ、大堀相馬焼の火をともし続けた。

 その一方、古里を離れての創作という葛藤と向き合ってきた。「『大堀』の名を冠している以上、その土地や産地で制作していることに意義がある」。浪江町で作陶を再開する日を頭の中で描き続けてきたという。

 町は1月30日、原発事故による帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除の時期を「3月末まで」とする方針を示したばかり。近藤さんの工房は復興拠点の一つに設定されており、避難指示が解除されれば、本格的に工房や窯場の整備を進めていく考えだ。

 近藤さんは「同じ道を志す若い世代を呼び込むことが大事。われわれ世代までつないできた技術を100年、200年とつなげる最初の礎になりたい」と力を込める。