双葉町唯一の診療所開所 週3日、医師2人交代勤務

 
双葉町診療所の開所を祝いテープカットする関係者

 双葉町が同町長塚のJR双葉駅西側に整備した「双葉町診療所」が1日、開所した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から約12年ぶりに町内で医療が再開し、帰還した町民らの1次医療を担う。同日、現地で開所式が行われた。診療は2日から。

 診療所は双葉駅西側の公営住宅「えきにし住宅」に隣接する約900平方メートルに木造平屋を整備。診療科目は内科で、医師はいずれも原発事故前に町内で医療に従事していた草野良郎氏、白●正人氏の2人で、交代で勤務する。看護師は町から業務委託を受けた南相馬市の鹿島厚生病院から派遣される。院内に診察室やレントゲン室、内視鏡室などがある。薬は院内で処方する。

 式では伊沢史朗町長が「帰還者や移住者の安全・安心の確保、健康不安を払拭する医療施設の設置は不可欠だった。住民の安心のよりどころとなるよう目指していく」と述べた。診療は火、木、金曜日の午前9時~正午、午後1時~同4時30分。問い合わせは町診療所(電話0240・23・7386)へ。

 ※●=土の右上に点

 「町民の期待応えたい」12年ぶり勤務、草野医師

 双葉町診療所の管理者に就いた医師の草野良郎氏(67)は東京電力福島第1原発事故前まで22年間、町内の双葉厚生病院(現在休止中)の医師として町の医療を支えてきた。双葉で医療に当たるのは約12年ぶりで「住民の期待に応えたい」と力を込める。

 郡山市出身の草野氏は、双葉厚生病院での勤務を機に双葉町に移住。原発事故当時は混乱を極めた院内で患者の避難誘導に当たった。事故後は白河市の白河厚生総合病院の常勤医、いわき市の双葉郡立勿来診療所の非常勤医として働く。

 昨年8月にJR双葉駅周辺の特定復興再生拠点区域で避難指示が解除された町には現在、約60人が暮らす。ほとんどは高齢者で、長い避難生活による生活習慣の乱れに起因する健康被害が懸念される。糖尿病も専門の草野氏は「1人暮らしの高齢者が多く、糖尿病や生活習慣病に対応したい。患者の悩みに寄り添うことも医療だと思う」と語った。

 「気候と自然が好きだから、双葉が好きだ」と草野氏。約4年前に町から診療所勤務の打診を受け、即答した。町内にある自宅は改修済みで、郡山市と双葉町の2拠点生活で町の医療を支えていくつもりだ。