浪江の復興拠点、避難指示解除「3月初めに判断」 町長示す

 

 浪江町は5日、東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除に向けた住民説明会を二本松市と浪江町で開いた。県内外7会場で開いた一連の説明会を終え、吉田栄光町長は報道陣の取材に「町民から寄せられた課題への協議を2月中に行い、3月初めをめどに解除の判断をしたい」とし、「3月末まで」の解除に向けた調整を進める考えを示した。

 二本松市では室原地区の自宅に準備宿泊している住民から「近くに消防団員はおらず、初期消火の遅れに不安がある。消火設備の整備など地域の防災、防犯の対応を前向きに考えてほしい」との声が上がった。

 浪江町では、同地区から白河市に避難する男性(69)が「12年という年月はあまりに長過ぎた。家族の生活基盤はほかにできた。帰りたくても帰れないという気持ちを分かってほしい」と悲痛な思いを訴えた。

 町の復興拠点は室原、末森、津島の3地区の一部に設定された計約6.6平方キロのほか、国の伝統的工芸品「大堀相馬焼」の保全を進めるため、大堀地区の陶芸の杜おおぼりや各窯元などが設定されている。

 1月1日現在の住民登録者数は329世帯897人。昨年9月に始まった準備宿泊にはこれまで9世帯18人が参加登録している。

 広域連携で高齢者向け福祉施設の整備検討

 吉田栄光町長は浪江町で開いた住民説明会で、高齢者向け福祉施設の充実に向け、双葉郡の近隣町村との広域連携による介護老人福祉施設の整備を検討していることを明らかにした。

 説明会では町民から「帰還する町民のほとんどは65歳以上の高齢者が多い。老人施設の充実を早急に図ってほしい」との要望の声を受け、吉田町長が答えた。浪江町を含め双葉郡では介護人材の確保などが課題となっている。

 また吉田町長は、町内外にいる高齢の町民の健康増進施策を拡充させる考えを示した。