公共施設維持費、12自治体懸念 福島第1原発周辺、沿岸市町村

 

 東京電力福島第1原発周辺や沿岸部にある県内15市町村の8割に当たる12自治体が、東日本大震災に伴う国の財政支援などで整備した公共施設の運営を巡り、今後の維持管理や更新に伴う負担の増加を懸念していることが27日、復興庁の調査で分かった。被災した宮城、岩手両県の多くの市町村も懸念を示し「将来人口推計や利用者推計をしっかりと行い、施設規模を過大にしないことが必要」などと提言。復興庁は今後発生が予想される大規模災害時に教訓として生かす方針だ。

 復興庁が震災から10年間の復興政策を検証する有識者会議で調査結果を公表した。調査は福島、宮城、岩手3県の42市町村を対象に昨年12月~今年1月に行い、回答率は100%。本県では田村、南相馬、川俣、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘、いわき、相馬、新地の15市町村が答えた。

 公共施設の今後の運営に関する回答をみると、3県の42市町村のうち約8割に当たる33自治体が負担の増加を懸念している。「懸念はない」と回答したのは岩手県内の1自治体のみで、本県の3自治体を含む8自治体は「どちらともいえない」とした。

 次世代が税負担恐れ

 震災後の公共施設の整備を巡り、3県の自治体では国の財政支援などにより施設の新設や更新が相次いだ経緯がある。本県でも住民の帰還に向けた地域の魅力創出やコミュニティーの再生などに一定の効果を発揮したが、住民からも次世代にまたがる税負担の増加を心配する声もある。

 33自治体のうちの一部は「一度に多数の施設を整備し、更新が集中する時期の財政負担が懸念される」として維持・管理面でも国の支援を求めた。災害発生後の公共施設の在り方については「施設の集約や新設の抑制」が必要との意見も上がった。

 有識者会議で委員は「復旧・復興を適正な事業規模とするためにはどのような方法があり得たのかを考察し、今後の教訓とする必要がある」と指摘した。

 被災者支援、評価4自治体

 復興庁は東日本大震災から10年間の復興政策に関する調査で、東京電力福島第1原発事故からの復興の各段階に応じた国の被災者支援に対する市町村の評価も聞いた。本県の対象15市町村のうち10自治体は「どちらともいえない」と回答、風評が根強い現状などを踏まえて「評価できる段階ではない」などとした。

 本県で国の被災者支援策を評価したのは4自治体にとどまり、1自治体は評価していないとの姿勢を明確にした。福島、宮城、岩手3県の対象42市町村の回答を見ると、約8割の32自治体が「どちらともいえない」とした。ある自治体は「観光や水産業が震災前の水準まで回復していない」と風評が根強い現状を強調。第1原発で発生する処理水の海洋放出について「復興のステージを戻してしまう」と懸念した。国の支援に関して「過剰な賠償は帰還が進まない要因となり得る」と指摘する自治体もあった。

 社会情勢の変化、24自治体「反映」

 調査では、復興の目標や将来像を決める際に人口減少など社会情勢の変化を反映したかどうかも聞いた。県内6自治体を含めた24自治体が「反映した」と回答した。一方で本県の6自治体を含む13自治体が「どちらともいえない」とした。理由として「復興計画の策定にはスピード感が求められ、社会情勢を反映させるための時間やマンパワーが足りない」などと指摘した。

 「復興の司令塔」となる復興庁が各省庁との調整や要望などを把握するワンストップ窓口としての役割を十分に果たしたかどうかについては、県内8自治体が評価した一方、7自治体は「どちらともいえない」とした。調整機能を巡り「各省庁の意向が背景にあり、ワンストップ機能が十分ではないケースもあった」などの意見もあった。

 復興庁は新年度にも専門家や市町村の意見などを踏まえ、震災の教訓などを盛り込んだ記録誌をまとめる方針。

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