避難長期化で関連死リスク 南相馬の死者4割、発生6カ月以降

 

 東日本大震災の災害関連死と認定された南相馬市の520人の発災から死亡までの期間は平均230日で、約4割が6カ月以降に亡くなっていた。福島医大放射線健康管理学講座の坪倉正治主任教授らの研究チームが調査した。約8割が3カ月以内に死亡した宮城県石巻市とは異なり、東京電力福島第1原発事故に伴う長期避難や生活環境の変化が要因とみられる。

 坪倉氏は「原発事故の教訓として最も大きいのが二次的な健康影響の大きさだった。さまざまな理由で亡くなった方がいて、一つ一つに対応した対策を考えないといけない」としている。

 県内の自治体で災害関連死が最も多い南相馬市で、2011年9月~21年2月に認定された520人を調査した。3カ月以内に亡くなったのは約4割で、残り2割が3~6カ月以内に死亡していた。

 大半が誤嚥性肺炎

 平均年齢は82歳で267人が発災時に介護申請があった。死亡までの平均期間は介護申請がない人の304日に対し、介護度が最も高い「要介護度5」の人は159日で、死亡原因の大半が誤嚥(ごえん)性肺炎だった。

 南相馬市内の五つの老人ホームでは死亡率が発災前の2.7倍となった。避難を行ったある老人ホームでは避難後90日以内に4人に1人が死亡しており、避難で引き起こされた生命のリスクは、とどまって放射線を浴びていたら引き起こされていたかもしれない生命リスクの約400倍大きく、坪倉氏は「安全な搬送や誤嚥性肺炎の予防に重点を置くことが重要だ」とする。要介護度4以下の死亡原因は循環器系の病気が最多だった。

 被災3県のうち、宮城と岩手では地震や津波による直接死が90%以上を占める一方、本県では関連死が59%と直接死を上回っている。

 医療や介護、継続重要

 坪倉氏は「避難先でのケアの維持、発災前までに行われていた医療や介護をいかに継続できるかが重要だ。災害関連死を忘れてはならなず、福島を教訓として次の防災につなげてほしい」と調査の意義を語った。調査には常磐病院の沢野豊明氏や福島医大医学部5年の川島萌氏らが協力した。