4歳の思い出あったよ 大熊の保育所で震災当時の私物持ち出し

 
大熊町保育所に残された私物を家族と持ち出す佐藤凜花さん(左)=25日午前、大熊町下野上

 大熊町は25日、東京電力福島第1原発事故による全町避難で長く立ち入りができなかった大熊町保育所について、施設内に残されたままの私物の持ち出しを希望する町民に開放した。原発事故当時、保育所に通っていた町民が訪れ、12年前の思い出の品を探し出して大事に持ち帰る姿が見られた。施設の開放は26日も実施される。

 大熊町保育所は同町下野上にあり、原発事故当時は就学前の約120人が通っていた。施設は今後、解体される予定になっている。

 25日の施設開放では、当時4歳で現在はふたば未来学園高1年の佐藤凜花さん(16)が、いわき市から祖母広子さん(67)、母てる美さん(43)と一緒に保育所を訪れた。「遊ぶのが大好きで、昼寝したくなかったことぐらいしか覚えていない」という凜花さんだったが、通っていた保育所の部屋に入って自分の持ち物を探した。

 間もなく母や祖母が「凜ちゃん、あったよ」と、家庭と保育所で交わした連絡ノートや、名前が縫い取りされたピンクのバッグなどを見つけてくれた。バッグを作った広子さんは「送り迎えや運動会などを思い出すね」と目を細めた。てる美さんは小さい上履きやコップなどを手に取り「ずっと、ここにあると気にかかっていました」と話した。

 凜花さんが自分の名前が書いてあるスケッチブックを開くと、女の子の絵とともに覚えたてであろう字が添えられていた。「何て書いてあるか分からないな」と表情を緩めながらも大事に手に持った。「思い出の品が全然なかったから、きちんと保管したい。来て良かった」と思いを語った。